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イベリス
第三十五話 テストの結果を受けてその二

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「そろそろ転勤するかどうかね」
「わかるの」
「その転勤先もね」
「そうなのね」
「まあ関東で」
 転勤するにしてもというのだ。
「遠くじゃないから」
「うちから通えるわよね」
「群馬とか茨城じゃないから」
「そっちでも通えるでしょ」
「ええ、何かね」
 それは可能だというのだ。
「栃木でも」
「東京から関東のあちこちに行けるから」
「確かに時間はかかるけれど」
 そうなるがというのだ。
「けれどね」
「群馬でも栃木でも茨城でもね」
「当然千葉にもね」
 この県にもというのだ。
「うちからね」
「通えるわね」
「ある程度場所によるけれど」
「ガソリンスタンドの店長さんとか」
「ええ、けれどね」
 それでもというのだ。
「大抵の場所はね」
「うちから通えるから」
「安心していいわ」
「そうなのね」
「まあ東京か神奈川でしょ」
 母は笑って転勤してもこのどちらかだと話した。
「安心していいわ」
「何かお父さん埼玉だったら嫌そうだけれど」
「まあないでしょ」
「東京か神奈川ね」
「元々そっちで仕事していた人だしね」
 だからだというのだ。
「それはないわ」
「埼玉はないのね」
「まずね」
 娘に笑顔で話した、そうしてだった。
 共に夕食を摂って父の帰りを待っていると。
 父はかなり酔って帰ってきてた、千鳥足で家に入って言ってきた。
「転勤だ」
「そうなったの」
「それもだよ」
 迎えた咲に苦い顔で言った。
「埼玉だ」
「あれっ、埼玉になったの」
「ああ、何で埼玉なんだ」
 娘にこうも言った。
「それも所沢だ」
「お家からすぐじゃない」
 埼玉それも所沢と聞いてだ、咲は父に返した。
「それだと」
「埼玉なんだぞ」
 父は娘に酔った顔で答えた。
「あそこなんだぞ」
「埼玉本当に嫌なの」
「嫌も嫌だ」 
 それこそという返事だった。
「もうな」
「何があってもなのね」
「埼玉は嫌だ」
「そこまで嫌いな理由知りたくなったわ」
 ここまで聞いてだ、咲は心から思って言った。
「本当にね」
「聞きたいか」
「聞いてあげましょう」
 ここで母が口をへの字にしながらも父の心を汲み取って言ってきた。
「今は」
「そうしてあげるの」
「それも家族のすることよ、お父さんにはお水出してね」
 そしてというのだ。
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