第二章
[8]前話
「それで働かざるを得なくてな」
「それで、ですか」
「自分の父親の葬式にも出なかったってな」
「奥さんにですね」
「愛想を尽かされてな」
「離婚ですか」
「しかも会社で自分の奥さんの葬式にも出ない様な奴だってな」
その様にというのだ。
「悪評が立ってな」
「それで、ですか」
「いられなくなってだ」
「辞めたんですか」
「そんな話を見たんだ、だからな」
「課長はですか」
「絶対にそんなことはしない、それに大事な人を看取ることもだ」
このこともというのだ。
「その人も喜んでくれるし人のやるべきことだ」
「だからですね」
「一週間有給を取れ」
課長は徳永に告げた。
「今からな」
「わかりました」
「見送って来い」
この言葉は微笑んで出した、そうしてだった。
徳永を送り出した、彼はまさに即座にだった。
大阪から愛知に向かった、新幹線に乗るとまさに風に乗った様であり。
すぐに名古屋に着きそこから実家に帰った、そうして病院にいる曾祖母と会った。彼女は彼の顔を見てだった。
微笑んで息を引き取った、そしてお通夜と葬式も終わってだった。
「そうか、会えたか」
「うん」
徳永は大阪に帰ってから北川に答えた。
「よかったよ」
「それは何よりだったな」
「本当にね。やっぱり大事な人の死に目にはね」
「会いたいしな」
「合わないと駄目だね、しかし三日どころか」
徳永はさらに話した。
「一週間なんてね」
「課長が有給取ってくれたことか」
「まさかだったよ」
「俺にも言ったよ、課長がこの会社に入った時のな」
「酷い上司の人だね」
「そうした人間もいるんだな」
「最低の人間だね」
徳永は顔を曇らせて述べた。
「本当に」
「そんな人はな」
「全くだよ、けれどね」
「そうした人は自業自得の結末を迎えるな」
「そうだね、けれど僕達はね」
「そんな風にはしないでおこうな」
「絶対にね、さもないと同じことになるよ」
徳永は真顔で話した。
「自分がね」
「ああ、大事な人の死に目には会う」
「そして会わせる様にする」
「そうなる様にして」
「していこうな」
「僕達もね」
徳永は北側に話した。そして課長に礼を言ったが彼は当然のことだと笑って返した。そして自分も部下にはそうしろと言い徳永は確かな顔で頷いた。
死に目に会うこと 完
2021・12・25
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