暁 〜小説投稿サイト〜
役立たずが家に来て
第四章

[8]前話 [2]次話
「だからよ」
「その仕返しにだね」
「家にも置いてあげてるのよ」
「だからなんだ」
「そうよ、それならよ」
「ああして暴力を振るってもなんだ」
「いいでしょ、ずっと私に酷いことして置いてやってるんだから」
 こう言うのだった。
「有り難いと思わないと駄目よ」
「そう思ってるんだね」
「そうよ、あいつは本当に敵だから」
 怒った顔での言葉だった。
「だからよ」
「暴力を振るうんだね」
「あいつが産まれてから高校を卒業して家を出るまでね」
 怒りに怨みが加わった、その顔に。
「私があいつと両親に何をされてきたか」
「けれど殴られたのかな」
「言われたけれどそれはなかったわ」
 春奈はそこは正直に言った。
「全くね」
「そうだね」
「けれどよ」
「怨みがあるからなんだ」
「あいつにだけは別よ」
 暴力を振るうというのだ。
「何があっても許さないから」
「仕返しは続けるんだ」
「そうしていくわ」
「あの、お母さん」
 今度は娘が言った。
「今のお母さん凄く怖いから」
「お母さんが?」
「叔母さんを怒ってる時のお母さん鬼みたいよ」
「鬼って。お母さん和香に酷いことしたことないでしょ」 
 母としてその自覚があって言った。
「コチにもポコにも」
「うん、誰にも優しいよ」
「だったらいいでしょ」
「ううん、怖い」
 こう思うとまた言った。
「鬼みたい」
「そんな、和香達は大切にしてるのに」
「僕にもね」
 夫も言ってきた。
「そして家族以外の誰にもね」
「だったらいいでしょ」
「よくないよ、今の君はおかしいよ」
 妻に悲しい顔で話した。
「妹さんを憎んで嫌い過ぎだよ」
「だからそれは」
「昔酷いことをされたからだね」
「そうよ、十年以上ね。それを思えば」
「当然なんだね」
「そうよ、親は死んだけれど」
 それでもというのだ。
「あいつだけ残ったからね」
「それで何も世話しないで鬱病の通院もさせないで」
「そんな必要ないからよ」 
 治療なぞ考えもしていない、ずっと苦しめと思っているのだ。
「だからよ」
「ああしているんだね」
「そうよ」
「じゃあこれからも」
「あいつだけは許さなくてね」
 そうしてというのだ。
「やり返していくわ」
「許さないの?叔母さん」  
 娘がまた言ってきた。
「ずっと」
「ずっとよ」
「殴って蹴るの」
「そうしていくわ、ご飯もね」 
 夏樹の分を作ったことはない、勝手に余りもの酷い時は残飯を食べさせるに任せている。散らかせばその時は暴力を振るっている。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ