廃工場
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トはただ廃工場の中を彷徨っていた。
「探すと言っても、どこから探すかな……?」
広大な土地であるこの工場。
すでに使われなくなって久しく、歩いているだけで埃に咳き込んでしまう。
「ゲホッ……コヒメちゃん! いる!?」
ハルトの声が暗がりのなかに響いていく。だが、返って来るのは自身のエコーばかり。
「コヒメちゃん! ……そうそう見つからないか」
時間も時間であるため、ただでさえ暗い室内が、より一層闇に包まれていく。
さらに、ここは勝手も分からない工場。少し歩くだけで足は機械に蹴りあたり、頭は機材に衝突する。
「痛っ……!」
頭にできたたんこぶをさすりながら、ハルトは頭上を恨めしそうに見上げる。
「何だよもう……」
口を尖らせたハルトは、この状況に対応した指輪を取り出した。
数多あるハルトの指輪の中で、この状況に適した指輪。それは。
『ライト プリーズ』
「前も思ったけど、やっぱりこれ便利だな」
室内が、頭上の魔法陣から迸る光によって明るくなる。
「さてと……」
誰もいない廃工場。
春なのに、幽霊でも出てきそうだなと勘繰ってしまう。
その時。
ガシャン。
「うおっ!」
その音に、ハルトは跳び上がる。
やがて、暗闇からコロコロと転がってきた機械のパーツに、ハルトは胸をなでおろす。
「何だ……ただ落ちてきただけか……」
普段亡霊と呼ばれる怪物と戦っておいて何を怖がっているんだと思いながら、ハルトはさらに進む。
だんだん天井が高くなっていく。
そこは、巨大な稼働機械が設置されている部屋だった。
「デカっ……!」
思わずハルトが感想を漏らすと同時に、ライトの魔法の効力が切れる。
「あ、切れた……」
暗闇の中、また物音が聞こえる。
『ライト プリーズ』
再びの光。見上げる大きさと、その複雑な構造を持つ重機が、再びハルトの目に飛び込んできた。
「ようこそ。ハルト君」
そして。
重機の前には、ハルトが探していた人物、二人のうちできれば会いたくない方がいた。
「……霧崎!」
フェイカーのサーヴァント、トレギア。
その人間態である、霧崎が、両手を広げてハルトを迎え入れていたのだった。
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