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絶撃の浜風
02 マッドでサイコな女
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に娘を差し出すなど以ての外と、法を盾になりふり構わず拒否する親が後を絶たなかった


 なまじ人権を認めた事が、かえって艦娘の召集を困難にしてしまうとは、皮肉なものであった



 それでも、親と子とは別人格であるという、ごく当たり前の考え方を持つ西欧諸国では、比較的早期に騒動が収束していた

 現実問題として、艦娘なしで深海棲艦に対抗する術もない上に、何よりも艦娘自身が戦場に赴く事を由としている以上、最終的には認めるしかなかったのである。欧州の艦娘が、日本に比べその数が少なかった事も無関係ではないだろう



 その一方、我が国ではそのような動きは殆ど見られなかった。日本人にありがちな、潜在的に子供を所有物と考えている親が、どの階層においても一定数いたため、未成年を理由に娘が兵役に就く事を拒否する親が大半を占めた



その結果は、悲惨の一言に尽きる



 国防の担い手である艦娘を禄に招集出来ず、圧倒的戦力不足を露呈した我が国の不明をあざ笑うが如く、深海棲艦の残党が大挙して押し寄せてきたのである

 これに対抗すべく各地から集結した艦娘たちはたったの8人・・・・最盛期に比べれば決して多くはない深海棲艦軍に対し、劣勢に追い込まれた

 国はまだ鎮守府に所属していない艦娘に出撃要請を出すが、この状況にあって親たちは娘の兵役を拒否。結果、深海棲艦により日本近海の制海権を数年ぶりに失う事となり、我が国は再び孤立した

 その間、民間人にも多数の死者が出て、8名の艦娘が力及ばず全て撃沈され、殉職した。外交・貿易手段を失った我が国の経済は急速に衰え、正に国家存亡の危機を迎えていた
 



2020年1月20日執筆


 ここに至り、政府は非常事態宣言を発令、有事立法により、艦娘たちの親権を強制的に剥奪し国家へと移譲、その上で改めて艦娘たちに出撃要請を行った

 要請に応じた艦娘(実際は全ての艦娘が要請に応じている)は縁の鎮守府へと配属され、順次戦場へと赴いた。結果深海棲艦軍は壊滅し、制海権を回復、復興への足がかりを掴んだ



 問題はその後だった



 実に馬鹿げた話であるが、親族たちの多くが、強制的に親権を取り上げた国家に対して訴訟を起こしたのである。訴状は不当に親権を剥奪し、娘を戦場へ送り込んだ事と、親権の返還に関する二点であった

 裁判そのものは親族側に優位に運んでいたが、個人的な感情を優先して国を危うくしたとして、国民の多くがこれに反発。裁判の行方を巡り、世論を巻き込む大論争が全国規模で起こった

 何より、当の艦娘たちが国側に付いた事が大きかった。必要以上に強すぎる親の権限が、国家を滅亡に導きかねないという事実を、多くの国民が認識せざるを得なくなったの
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