02 マッドでサイコな女
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2021年1月19日執筆
《・・・・・・》
大淀は、言葉に詰まった
彼女が知っている《浜風》の事情・・・・
この二年間、濱乃屋の現当主は浜風がまだ幼子であることを理由に、鎮守府からの出頭要請を拒否していた
確かに、僅か五歳で就役したという事例は過去になく、普通に考えて、当主が懸念するのも無理からぬ事であった
そこで某提督は、当面の間浜風には演習等の戦闘行為には従事させず、他の艦娘との交流を通して少しずつ慣らしていく旨を通達していた
だが、半年が過ぎても、当主は頑として孫娘の出頭を拒否。本来ならば事前に受けなければならない定期検査や面談さえも突っぱねたため、鎮守府関係者の誰も、浜風を見た者がいないという有様であった
いくら子供とは言え、浜風は艦娘である。深海棲艦に唯一対抗出来るその存在自体が、人類にとって掛け替えのない貴重な戦力なのである。いち個人の主張や権利を容認していては、国防が立ち行かなくなる・・・
流石にこれは捨て置けぬと、大本営が重い腰を上げた
公安に働きかけ、浜風を取り巻く濱乃屋の内情調査に乗り出したのである
公安が調査を開始して二週間が過ぎた頃、この濱乃屋で起きている異常な事態が、徐々に明らかになりつつあった
調査の間、浜風は濱乃屋の敷地の外に一歩も出ていなかった。それどころか庭はおろか、エントランスやホールにすら、姿を見せなかった
少なくとも、宿泊客として潜入調査をした程度では、浜風に遭遇する事はなかった
五歳の子供が一切人目に触れない・・・・泣き声さえ聞こえる事はない・・・いくらなんでもこんなことは通常あり得ない
この位の年頃の子供は、自我の芽生えと共に、自身の存在を強烈にアピールするものである。大声を上げて騒いだり、暴れたり、泣いたり笑ったりするものだ
だが、ここ《濱乃屋》には、そのような気配が全く感じられなかった
このような場合、職業柄、公安職員はつい《最悪》の事態を想起してしまう・・・・
ひょっとして浜風は既に亡くなっているのではないかと懸念を持たれたとしても無理からぬ事であった
だが、地下格納庫の艤装ブースには浜風の艤装が厳然としてあった。艤装と艦娘とは一心同体・・・・
艦娘が絶命すれば、艤装も消えてなくなる・・・・
故に浜風がまだ生きて何処かにいるのは間違いなかった
理由はわからない・・・・が、濱乃屋では、徹底した浜風の隠蔽が行われていた
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