第115話『遅延』
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」
「そ、そんなことないですよ! 猿飛さんのおかげでここまで来れたんですから!」
「ありがとう。でもほとんど君の実力だと思うな。羨ましいよ」
そう言って、風香は少し寂しそうな表情をする。そこには色々な感情が渦巻いているようで、晴登には推察できなかった。
それでも、晴登がこの場に立っているのは間違いなく彼女のおかげであり、彼女に教えてもらった成果でもある。だから、この言葉だけは伝えないといけない。
「……また、特訓してもらってもいいですか?」
「いいの? 私は君に負けたのに……」
「それでも、猿飛さんが俺の師匠なんです! たった数日じゃ満足できません!」
その晴登の真っ直ぐな瞳を見て、風香の表情も明るくなる。同時に、彼女はずっと持っていた疑問を口に出した。
「どうして君はそんなに強さを求めるの?」
「──大切な人を、守るためです」
「大切な人、か。いいね、そういうの。私は好きだよ」
風香は何かを察したようにそう言った。きっと結月のことだと思ったのだろう。
それも間違いではないのだが、大切な人というのには家族や友達、魔術部のみんなも全て含まれている。守るための力を持っているのだから、使わなければ損というものだ。
「うちの大将は強いよ」
「こっちだって負けません」
最後に握手を交わしながら、お互いにそう伝え合う。
勝負は全て、3本目の勝負に持ち越された。勝っても負けても、どちらかの決勝進出が確定する。一体、どんな戦闘が見れるのか──
*
「これは驚いたね……」
「どうなってやがんだあのガキ。あそこから勝つかよ普通」
「まるで主人公みたいだ」
観客席の一角、アーサーと影丸が試合の結果を見てそう零す。
誰がどう見ても形勢は晴登が不利だったというのに、突然人が変わったかのように動きを変え、あっという間に風香に勝利してしまった。それを成し遂げたのも全て──
「実際に見てみてハッキリした。あいつの能力に"未来予知"があるのは間違いない」
「そうだね。それに類するものと考えていいだろう。加えて精度も中々高そうだ。まだ使いこなしてはいないようだけど」
相手が技をどう受けて、どう避けるまで知っていたかのように見切ったあの洞察力は、中学生にしては秀ですぎている。魔術によって補強されてると考えるのは自然だ。
「面白ぇ。決勝で当たるのが楽しみだな」
不気味なくらいに口角を上げ、対戦を楽しみにする影丸。前日までの態度とは打って変わって、今となっては彼は晴登の力を評価している。やはり、最初見た時に働いた勘は正しかったらしい。
「気が早い
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