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餓鬼には何もいらない
第二章

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「だからな」
「もう徹底的にか」
「責め苛んでな」
「苦しめてやるか」
「助けることなんてな」
「だからカーテンもか」
 洋介はこれもと言った。
「売るか」
「売るぞ、絨毯も畳も売ったしな」
「机やテーブルまでな」
「家から全部な」
 それこそというのだ。
「取り上げるってしたんだ」
「相手が餓鬼だからこそか」
「そうだ、まだ家に何かあるか確かめるぞ」 
 文太は自らカーテンを外して話した、そうしてだった。
 家の中に何もないことを確かめてそうしてから洋介を職場に帰らせた、そして仕事から家に帰った彼に父は笑顔で話した。
「あいつ等から全部取り上げた」
「そうしたんだな」
「そして売って得た金はな」
「あいつ等には渡さないよな」
「全額寄付することにした、売らなかったものもな」
 それもというのだ。
「困っている人にあげる」
「そうするか」
「餓鬼のものになるならな」
「そうした方がいいか」
「そうだ、餓鬼には容赦しなくてな」
 それこそ全部取り上げて苦しめてというのだ。
「そしてな」
「本当に困っている人を助けるべきか」
「そうだ、それが人間の正しい道だとな」
「親父は思うんだな」
「俺はな、布施餓鬼なんか無駄だ」
 餓鬼になった輩のそれまでを思うと、というのだ。
「それよりもだ」
「今困っている人を助けるべきか」
「ああ、だからそうすることになった」
「それもいいことか」
「俺はそう思う、じゃあ今からふわりの散歩に行くな」 
 彼は自分から言った。
「そうしてくるな」
「ふわりには優しくだな」
「人や他の生きものにはな」
「それで餓鬼には容赦なくか」
「そうする、これからもな」
 こう言ってであった。
 文太は今度はケージの中にいるふわりに顔を向けてそうして彼女に笑顔で声をかけた。
「散歩に行くか」
「ワンッ」
 ふわりは父の言葉に笑顔で応えた、そうしてだった。
 彼女を散歩に連れて行った、その時の彼は優しい笑顔だった。餓鬼を見るのではなく優しくすべき相手を見てそうしていた。


餓鬼には何もいらない   完


                   2021・12・23
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