01 プロローグ 濱乃の憂鬱
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濱乃の亡き父方の祖母が当主としてその一切を取り仕切っていた
そしてこの祖母・・・当主はどういうわけか実の孫である濱乃に対し辛く当たっていた
まるで奉公に来た給仕さながらに
お客様にお出しする朝食の仕込みで目が回る位に忙しく働いていた
食事を取る暇もなく、下働きでいつも着ている粗末なスウェット姿のまま、ここに連れてこられていた。
お腹が空いて、力が出ない・・・・いや、お腹を空かせているのはいつもの事だった
ふと、演習場のスタンドにある時計に目をやる
丁度、午前十時を少し回った所だった
「・・・どうしよう・・・・」
濱乃は、御婆様から何も聞かされていなかった
ただ、一言
「ここにいなさい」
とだけ、言い残して先に帰ってしまった
こんな事は、初めてだった
いつもの御婆様は、濱乃の行うべき行為を明確に《命令》してくる
それに従いさえすればよかった
それが
こんなにも不明瞭な扱いを受けるのは、本当に初めてだった
どうしていいのか、本当にわからなくなっていた
ただ、一つだけ濱乃にもわかっている事がある
濱乃の実家は、ここ某市で有名な料亭旅館《濱乃屋》である。
御婆様はそこの現・当主であり、その一切を取り仕切っている・・・そして・・・
当主の孫である濱乃には、毎日必ずやらなければならない仕事が割り振られている
例えば、早朝の玄関の掃除に始まり、調理場の清掃、食材の仕込みやご飯の釜炊きなど・・・
信じがたい事だが、濱乃はこれらの仕事を五歳の頃から一日も休まず行っていた・・・・・
いや・・・・・
・・・・・・やらされていた・・・・・
そして・・・
いかなる理由があろうと、御婆様は濱乃が仕事を怠る事を、決して赦しはしない
濱乃には、まだ一つ仕事が残っている。
お客様のチェックインの時間までに大浴場の清掃を終わらせなければならない
ここが何処なのかはわからないけど
それまでには帰らなければならない
でなければ、濱乃にとって最も過酷な罰が・・・待ち受けている
「・・・・早く帰りたい・・・・」
《ここにいなさい》という御
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