01 プロローグ 濱乃の憂鬱
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それは、一ヶ月前の事
その少女は、途方に暮れていた
御婆様に言われるままに「家の者」に連れてこられた某鎮守府の演習場の前に、少女は一人置き去りにされていた
まだ7歳になったばかりの濱乃(はまの)は、自分の置かれている状況を理解出来ず困惑するばかりだった
何故自分はこのような所に連れてこられたのだろう?
そこは、濱乃の知らない場所だった
濱乃は・・・自分が何者であるかさえ知らなかった
ただ目の前で繰り広げられている光景を目の当たりにして、目を白黒させるばかりだった
それは・・・・
それは、様々な艤装を施した、年の頃にして十代半ばから二十代半ば位と思われる若い女性たちの戦装束姿・・・・
それは、濱乃が生まれて初めて目にする光景だった
鉄と火薬の焼けた匂いのする雷管と、眩いばかりに輝くうら若き乙女という、似ても似つかぬミスマッチな取り合わせ・・・
その凛々しくも美しい姿に、幼い濱乃は、自分が見知らぬ場所に置き去りにされたことも忘れ、ほんの一時、心を奪われていた
「みんなきれい・・・・何か・・・・・すてき・・・」
濱乃は、その女性たちが艦娘である事を知らなかった
艦娘たちの自信に満ち溢れた表情と、勇んで戦場へ赴く後ろ姿・・・・・
見ているだけで、心が震えた
何故だかわからない
けど・・・何かが胸の奥底から込み上げてくるのを感じる・・・・
とにかく、居ても立っても居られない・・・そんな気持ちになっていた。
でも・・・・ふと我に返る
眩いステージの傍らで背伸びをして魅入っている自分の姿を思う・・・振り返る・・・
何とも言えない、居心地の悪さを感じていた
まだ幼い濱乃は、その気持ちを形容する言葉を持ち合わせていなかった
《自分は、何と場違いな存在だろう・・・・》
それが・・・・濱乃が言葉に出来ない気持ちの正体であった
そもそも・・・
「・・・どうして・・・・・濱乃はここにいるの・・・?・・・御婆様・・・」
つい一時間前の事
某鎮守府の所在地である某市浜崎町の少し外れた山奥に濱乃の生家があり、地元ではちょっと名の通った料亭旅館「濱之屋」がそれであった。
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