プレリュードその五
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自分だけで校内を見回る。そうしたのだ。その彼を見てだ。
生徒達はだ。今度はこう言うのだった。
「何か神秘的っていうか?」
「高尚?」
「孤高な感じがするかしら」
「やっぱり教会にいるだけはあるわね」
「そうよね」
主に女の子達が言うことだった。中には的外れと思われる言葉も見られるが。
彼は次第に何かが違う特別な印象を受ける生徒になっていた。だが人付き合いはあった。
だがその付き合いもだ。人生というものを深く、極めてよく見ている者が見れば何処か冷たいものだった。他人との距離が明らかにある、そうした人間であった。
その彼が教会に戻ると。すぐにだ。
神父、初老の彼が来てだ。こう言って来た。
「お帰り為さいませ」
「うん、誰か来たかな」
「いえ、誰も」
こうだ。神父は自分よりも遥かに年少の彼に恭しく言うのだった。
そして十字もだ。神父に対してこう返した。
「八条学園にもいるね」
こうだ。目上の口調で言うのだった。
「あの学園にもね」
「それではですか」
「ただ。気配は感じるだけで」
今はそれだけだというのだ。
「これから調べてね」
「そのうえで、ですか」
「裁きを与えるよ」
ここでだ。十字の目が光った。
黒いその目から冷たい、氷を思わせる光が放たれた。そしてその目でだ。
礼拝堂、キリストがいるその礼拝堂の中央を神父を従えつつ進みだ。こう言うのだった。
「そしてその際はね」
「いつも通りですか」
「そうするよ。神の裁きは」
ここで礼拝堂の前に来た。ステンドガラスから差し込む光に照らされた礼拝堂は黄金の輝きを今は弱く見せている。
その礼拝堂の前に来てだ。彼は神父に言うのだった。
「呵責なきものでなければならない」
「だからこそですね」
「日本に来て既に裁きは下しているけれど」
「あの社長と部下達ですね」
「この学園でも同じだね」
十字架にある主を見上げながらの言葉だった。
「裁きを与える者がいるね」
「ではその際は」
「この教会も使うことになるかもね」
「用意は出来ております」
神父は冷静そのものの声で己の前にいる十字に述べた。
「ですからその際はです」
「うん、お願いするよ」
「それでは」
こうした話をしてだった。二人は礼拝堂の主の前に跪き。
礼拝を行った。そしてそれが終わってからだ。
立ち上がりだ。十字は神父に顔を向けて言った。
「では今からね」
「御食事ですね」
「主の血と」
そしてだった。
「肉を頂こう」
「では」
こうしてだった。彼等はだ。
今は礼拝堂を後にしてだ。そのうえでだった。
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