プレリュードその四
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「気でわかりました」
「気ってこいつ何か」
「ああ、違うな」
「普通の奴じゃねえぞ」
「教会は教会でも」
教会と言っても様々だ。彼等が感じ取った教会は。
「異端審問、まさかな」
「それだってんじゃないよな」
「僕は異端審問ではありません」
十字はその微笑みでそのことは否定した。
そしてだ。こう言ったのである。
「ただ。神の剣であります」
「剣っておい」
「何なんだよ」
「先輩達には何もありませんので」
またこう言いはしたのだった。
「御安心下さい。それでは」
「ま、まあ俺達はあれだよ」
先輩達は十字が前に出たところでだ。囲みを解きだ。
そのうえで牙を抜かれた犬の顔になりだ。こう口々に言ったのである。
「女遊びとかしなかったらいいからな」
「学校のルールを守って大人しくしてればいいさ」
「じゃあな。それだけは守れよ」
「それだけだからな」
「はい、そうさせてもらいますので」
十字はそうしたことはあっさりと受け入れた。そのうえでだ。
先輩達の囲みから先に進む。そうしてなのだった。
彼は校内の何処かへと去って行った。そしてだ。
その彼の背を見送りだ。先輩達は口々に言うのだった。
「あいつ、何だ?」
「絶対に普通じゃねえぞ」
「あの冷たさは何だよ」
「正しい奴みたいだけれどな」
善人でもだ。所謂『いい人』でもなかった。
正しい、しかしその正しさはだった。
「氷みたいな奴だな」
「それでいて何でもする様な」
「あいつは相手にしたらいけないな」
「絶対にな」
彼等もそのことは察した。そうしてだった。
彼等はそれからは二度と十字に近寄らなかった。その十字はというと。
校内を何日もかけてくまなく歩き回りだ。色々と見回った。その彼を見てだ。
女の子達はだ。こぞって近寄って来てだ。こう申し出たのだった。
「ねえ、よかったらね」
「学校案内しようか?」
「色々知ってるからね」
「どうかしら」
「いや、それはいいよ」
だが、だ。十字はだ。
彼女達のその申し出を穏やかだが冷たい響きの声で断りだ。そのうえでだ。
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