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バスク語とか
第一章

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            バスク語とか
 三森黒羽は黒髪をロングヘアにしていて切れ長の目を持っている、背は一六〇程で整ったスタイルである。
 職場では普段は普通の大学を卒業したてのOLであるが。
「スペイン語喋られるんだ」
「イタリア語、フランス語、ポルトガル語もわかります」
 黒羽は上司の音無恭吾に笑って答えた、一八〇近い長身で恰幅のいい中年男だ。三十代になって髪の毛がそろそろ心配になっている丸顔の男である。
「私子供の頃から高校卒業までセビーリャにいたんで」
「スペインの街だったね」
「あのカルメンとかフィガロの結婚とかで有名な」 
 こうした歌劇の舞台だった街でというのだ。
「親の仕事の関係で十年以上いたんで」
「スペイン語喋れてだね」
「書けます、それでラテン系の言語はどれも近いんで」
「フランス語やイタリア語もわかるんだ」
「ポルトガル語も。方言位の違いなんで」
「スペイン語ってわかると便利なんだな」
 上司は黒羽の話に唸った。
「そうなんだ」
「それに中南米も殆どスペイン語ですね」
「そうそう、スペインの植民地だったから」
「ですから私そちらの人達ともお話出来るんで」
 黒羽は上司に笑顔で話した。
「この会社中南米にも進出してますけれど」
「それでだね」
「何かあったら任せて下さい」
「うん、ただ僕もスペイン語習ってね」
「お仕事に生かしたいんですね」
「うちは中南米への進出も進めているから」
 黒羽の言う通りそうであってというのだ。
「真剣に習ってね、普通にやり取り位はね」
「出来る様になりますか」
「そうするよ」 
 こう黒羽に言った、それで彼もスペイン語を勉強してだった。
 仕事のやり取り位は出来る様になった、だがある日。
 仕事場に一人の四十代の浅黒い肌に独特の角ばった眉の辺りが出ていて頬がこけてラテン系だが何処が違う雰囲気の男が来てだった。
 彼等の言語で話した、だが。
 上司はそれがわからなかった、聞いてみるとスペイン語でなく。
 慌てふためいた、社内の他のスペイン語がわかる者もだった。
「わかりません」
「これスペイン語ですか?」
「違うんじゃないですか?」
「何語ですか」
「イタリア語かフランス語ですか?」
 皆わからなかった、だが。
 外回りから帰って来た黒羽が彼と話した、するとだった。
 彼女は普通にやり取りをして相手も笑顔で頷いた。そうして話は収まった。
 だがその話の後でだった、上司は彼女に尋ねた。
「あの人の言葉だけれど」
「あの人バスク語喋ってました」
 黒羽はあっさりと答えた。
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