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プロレスラー相手は無理だ
第二章

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「だからな」
「警察呼ぶの」
「ああ、酔ったプロレスラーが暴れてるってな」
 この現実をそのまま言うというのだ、そして実際にだった。
 彼は遥を安全な傍のコンビニの中に入れて通報した、そのうえで駆け付けた警官達と共にレスラーを取り押さえてトラ箱に入れたが。
「大変だったのね」
「腕や脚振り回しただけで台風みたいで三人がかりで吹き飛ばされたよ」
 全てが終わった後で小宮山は遥を迎えに来て彼女を送りつつ話した。
「それでも何とかパトカーに入れたけれどな」
「それで終わり?」
「パトカーのドア蹴ったらトア一撃で外したよ」
「とんでもないわね」
「それで手足縛ってな、警察は何とかトラ箱に送ったけれどな」
「大変だったのね」
「ああ、大した怪我してないのが奇跡だ」
 新堂は右手の甲の擦り傷を見ながら言った、もう手当しているがまだ痛む。
「幾ら強くてもな」
「もっと強い人がいるってことね」
「相手を見極めてな」
 その強弱をというのだ。
「馬鹿をしないことも大事なんだよ」
「そうなのね」
「だからお前をまず安全な場所に行かせたんだよ」
 コンビニの中にというのだ。
「あそこなら最悪トイレの中でも逃げられるしな」
「そうしたら安全ね」
「ああ、それで俺は通報してな」
「お巡りさん達と一緒に取り押さえて」
「ことを収めることにしたんだよ」
「そうなのね」
「幾ら強くなっても上には上がいてな」
 そうしてというのだ。
「無闇な争いは避けてだよ」
「どうしようもない相手には」
「ああするべきなんだよ」
「そうなのね」
「ああ、暴力は振るわなくてな」
 そうしてというのだ。
「そしてだよ」
「迂闊に向かわないのね」
「本当に強くなりたいならな」
「そうしたこともわからないと駄目ね」
「そうだよ、酔った大きなプロレスラーなんてな」
「女の人でも」
「猛獣と同じだからな」
 そこまで危険だからだというのだ。
「絶対に一人で向かうか」
「ああするべきなのね」
「それでも大変だったからな、じゃあん」
「うん、これでね」
「帰ろうな、送るな」 
 小宮山は遥に笑顔で言った、そうしてだった。
 彼女を家まで送って帰った、彼はそれからも空手と骨法を続け鍛えていき強くなった。だが暴力は振るわず勝てない相手は冷静に見極めて落ち着いた対応をしていった。遥はそんな彼を見てこれこそ真の強者だと思った。わかっていると見たからこそ。


プロレスラー相手は無理だ   完


                2021・12・20
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