暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第一部 1977年
帰郷 その2
[1/2]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
神戸港から、日本に入ったマサキは、驚いた
あの大戦により焼失した建物、失われた社会制度、慣習が息づく姿に
大都市圏は、ほぼ《元の世界》の戦前の影響を色濃く残る
解体されず残った帝国陸海軍、複線型の学校制度
不思議な感覚に陥った

二台のセダンで、京都へ向かう
道路事情は多少は良くなっているが、何か立ち遅れた感じがしないでもない
高速道路網も、空襲や世銀の借款が無かったせいか、少ないように感じる
妙に、変なのだ
驚いたのは琵琶湖運河掘削計画だ
これは《元の世界》でも計画されたが、結局、立案者が病死したことで立ち消えになった愚案

何より衝撃的な事実は、都が、未だ京都にあったことだ
《東京奠都》《ご維新》が無く、よく列強に伍する地位になった事に感心したのと同時に、先に要望した《仮住まい》の事を悔やんだ
自分は、東京郊外の心算で言ったのに、交通事情の悪く、蒸し暑く底冷えする盆地になど住む気など更々無かった

京都へ向かう車中、渡された書類を見ながら、同行する人間に問いかけた
「なあ、斯衛軍とは何だ」
脇に座る男が振り返った
男は悩んだ後、こう返した
「斯衛というのは、城内省に付属する独立した軍ですよ」
「城内省、なんだそれは……」
男は呆れた様子で、彼に説明を続けた
「皇帝陛下より大政を委任されている政威大将軍、つまり殿下をお支えする機関です」
(「ということは、将軍直属の親衛隊に……。抜かった」)
「もっとも今は殿下も《表》に、お出ましになる機会も少なくなってしまいましたが」
こちらを睨むような素振りで話し続ける
「外国に長く居らしたと聞いておりましたが……」
マサキは、落ち着いた様子で、返す
「正直、俺はよく知らん。美久も同じだ。そう思って応対してもらえば助かる」
(「で、誰と会うんだ」)
彼は車窓を覘いた
(「着けばわかるが……」)
彼の心中は不安に苛まれていた

マサキは、数名の男が待つ、京都郊外のゴルフ場に連れて行かれた
別にプレーをする訳でも無く、ゴルフコースに出ていたのは訳があった
それは防諜上の理由で、、あえてゴルフ場を選んだのだ
「大臣」、「閣下」という単語から類推するに、恐らく政治家と軍人
彼は、渡されたポロシャツとスラックスに着替えて、男達と歩きながら話した
「君が木原君かね。詳しい話は聞かせてもらっているよ」
初老の男が声をかけてきた
「そうだ。で、何を頼みたい」
持っていたゴルフクラブを、キャディーに渡しながら、続けた
「ならば単刀直入に言おう。来年度中に欧州で大規模な攻勢計画があってね。
君には我が国の、観戦武官と共に欧州戦線を詳しく確認してきてほしい」
当事者ではない日本にとっては、関係のない話にも見える
初老の男は、脇から若い秘書と思しき
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ