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冥王来訪
第一部 1977年
帰郷
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マサキ達は、2週間後、中共から離れた
天津からコンテナ船にゼオライマーを載せ、一路神戸へ向かう
待機期間中、ほぼ大使館の中で軟禁状態に近い形で過ごした
職員達は、深くは探ってこなかったが、色々と世話をしてくれた

夜半に目が覚めると、ドアを開け、船室から甲板に向かった
夜風に当たるために、外に出ていると、「帝都城出入り御免」と話す、例のビジネスマン風の男が居る
脹脛まで丈の有るダスターを着て、タバコを吸っている彼から、声をかけられた

「あんた、どうするんだい。この先よ……」
彼の言葉が、響いた
マサキ達は、この世界では、寄る辺なき漂流者なのだ
頼るべき家族も、友も、集団も、国家も、無い
この異世界、そして今から向かっている日本とも何ら関係は無い
名前が同じだけで、別な道を辿る国
冷静に考えると、危険な橋を渡っている様な感覚に陥る
偶々、大使館の職員が来てくれたから良かったが、接点は無い所へ、向かうのだ

嘗て、前の世界で、科学者・木原マサキであった時を、彼は思い起こしていた
秘密結社鉄甲龍に背き、反逆の末、輸送機、双鳳凰で日本に逃亡
しかし、助けを求めた日本政府に、簡単に裏切られる
計略により、治安当局に暗殺された彼は、不信感が拭えずに居た


暗澹たる気持ちに、飲み込まれて、考える
何れ、《BETA》という化け物共を消し去れば、恐らく用済みになって消されるか、半ば幽閉されて飼い殺しにされる
仮に肉体的に死んでも、ゼオライマーの中にある記憶装置さえあれば、スペアの肉体で、自分の記憶を容易に《上書き》出来る
そして、美久を鍵とする、次元連結システムがあれば立ち回れるが、その秘密を知られれば、方策はない
もっとも、スペアの肉体を用意するにしても、この世界の化学水準は不明だ
仮に、クローンや人工授精の技術があっても、鉄甲龍に居た時のように簡単に携えるとは限らない

欄干に寄り掛かりながら、悩む
この際、こいつ等の策謀に乗った振りをして、逆に利用出来る様策を練ろう
前回、暗殺されたように、政治や社会と距離をとるのではなく、手出し出来ぬ様な立場を得ねば、不味い

その様な思いが逡巡していると、再び男は声をかけてきた
「で、どうする。俺たちに協力するほかあるまい。アンタは帝国では根無し草だからな
日本人だと言う事で迎えに来たが、帰る家も、家族もないだろう……
協力するならば、整えてやるよ」
そう言うとタバコを、海に放り投げた

「そうか。じゃあ協力してやるよ。条件を飲むならな」
顔を上げながら、答え始める
「俺達には拠点も無ければ、生活手段もない。
ある程度、自由に動ける権利も欲しい。それが無ければゼオライマーも、唯の鉄屑だ」
男は驚いたような声を出す
「脅しかね。ならば……」
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