第二百三十二話 北の端までその八
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「歴史でもな」
「それも当然ですね」
「我々もそうした者にはなりたくないです」
「決して」
「だが劉邦も人間だ」
その彼もというのだ。
「人間ならばだ」
「それならですか」
「欠点もある人間なら」
「それならばですか」
「そうもなったしな」
変わったしというのだ。
「またいい面もあった」
「そうでしたか」
「劉邦もまた」
「彼は彼で」
「皇帝になってからも」
「元から人を見抜く目はあった」
このことも彼の武器の一つだった。
「そしてその者を用いて大きな仕事を任せもした」
「その長所はですか」
「皇帝になってからも備えていましたか」
「そうでしたか」
「太子に自分が招いても来なかった四人の賢人が従っているのを見てだ」
この話も史記にある。
「その者達を自分の下に入れられた太子の資質と賢人達の知識や頭の冴えを知っているからだ」
「もう太子を皇帝にしてもいい」
「自分の跡継ぎに相応しい」
「劉邦はそう言いましたか」
「そうだった」
尚之は太子の母である呂后が張良に太子が劉邦に疎まれやがて廃されるのではないかと考え相談したことから起こったことだ、劉邦には当時寵愛している后がおりその后の子を次の皇帝にしようかと考えていたのだ。
「皇帝になり猜疑心の塊になりだ」
「かつてのよさは失われ」
「どうかという人物になっても」
「それでもですか」
「そうだった」
長所は残っていたというのだ。
「それでもな、それも人間だ」
「悪く変わろうともですね」
「いい部分もある」
「それも残っていますか」
「蕭何は変わらなかった様だがな」
劉邦に疑われた彼はというのだ。
「人は変わることもな」
「頭に入れておくことですね」
「そのことも大事ですね」
「人については」
「それが人だ、万物は流転するというが」
ギリシア哲学のこの言葉も出した。
「人もだな」
「変わらぬものはない」
「常にですね」
「左様ですね」
「この世界にも方丈記があるが」
この書がというのだ。
「その通りだな」
「何もかもが変わりますね」
「そうなっていきますね」
「常に」
「そうしたものだな、そして俺もだ」
英雄自身もというのだ。
「同じだ」
「やはり変わられますね」
「上様にしましても」
「変わられますか」
「そうなる、俺自身は気付かずともだ」
それでもというのだ。
「やはりな」
「そうなっていって」
「そしてその中で、ですね」
「生きられて」
「この世界も救われますね」
「そうなる、仲間達もお前達もだ」
まさに誰もがというのだ。
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