第一部 1977年
深潭 その3
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帽を脱いで挨拶をすると、声をかけてきた
男は品定めをするようにマサキ達を見ている
マサキは、こう返した
「そうだ。早く休ませてくれ。周りが鬱陶しくて叶わない」
手に持った名刺を、中に着たワイシャツの胸ポケットへ乱雑に放り込む
「先ずは、この服じゃないのを用意してくれ。何時までも、着ては居られないだろう」
彼は、自身の着ている服を指差した
一度着替えてから、ずっと人民解放軍の軍服姿だ
「帰国するまでには準備します」
男は胸から手帳を出して、記録していた
その様子を見ながらマサキは、訪ねる
「で、どれ位かかるんだ」
男は顔を見上げて、続けた
「早くても船ですから1週間は待ってもらうしかありませんね」
(「この際だ、日本に行ってみるのも良いか。俺が知る日本ではないのだろうから取り込む余地があるかもしれん」)
話しかけられながら考えていたが、他に良策は無い様に思えた
米ソの超大国の考えは分からないし、何より生活習慣が違うのは疲れる
今回のように上手い具合に逃げられれば良いが、そうとは限らない
両国とも、堅牢な軍隊と強靭な防諜機関のあり、距離も遠い
脱出するまで、どの様な姦計に貶められるか、解らない
いくら無限のエネルギーといっても整備や保守もしなくてはならない
そう考えていると、男が話しかけてきた
「詳しい話は、帰国船の中でしましょう」
男が言うと、マサキは、肯いて返した
(「たしかに、何処に間者が居るのか、判らんからな」)
「良いだろう。詳しい話はあとで決めるとして、先ずは先約は守ってくれるだろうな」
彼がそう言うと、男は微笑んでいた
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