第二十二話 吹雪でもその七
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「希望といいますね」
「希望・・・・・・」
「パンドラの箱を開けた後に最後に残っているものです」
「僕のこの名前の通りに」
「そうです。希望を持たれていますね」
「あるからだよ」
その希望は微笑んで。自分の目の前にいる彼に答えた。
「一日も休まないでね。千春ちゃんのところに行ってるんだよ」
「そういうことです。希望を忘れないでいけばです」
「適うっていうんだね。願いが」
「その通りです。それに」
「それにって?」
「あの人のお名前ですが」
「千春ちゃんだね」
希望がその名前を口にしてみせた。
「夢野千春ちゃんだよ」
「そう、春ですね」
「そうです。春ですから」
「千春ちゃんには春に出会えるのかな」
「草木は冬は耐え春に生気を取り戻すものですから」
だからこそ春は尊ばれるのだ。どの国でも。
「その為に。おそらくは」
「春になんだ」
「もう少しですよ。頑張って下さいね」
「そうだね。もう少しじゃなくても頑張るつもりだけれど」
こう言ってだった。真人は自分のお好み焼きをひっくり返した。希望もそれに倣い自分のお好み焼きをひっくり返した。そのうえで裏面も焼く。
その香ばしい匂いも楽しみながらだ。希望は真人に答えた。
「春になるのを楽しみにしてるよ」
「それはもうすぐですから」
「希望だね。希望があれば絶対にね」
「諦めてはいけないですから」
「高校に入学してすぐ。あの時は」
今では遠い過去のものになっていた。まだ一年と経っていないのに。
その過去を思い出してだ。彼は今はこう言った。
「こんな風には思えなかったよ」
「絶望でしたか」
「それしかなかったよ」
こう言ったのである。
「あの頃はね」
「希望は見られなかったですか」
「いや、あったんだね」
真人を見てだった。希望は言えた。こう。
「あったんだよ。あの時も」
「何処にですか?希望があったのは」
「友井君だよ。友井君は何があっても僕と一緒にいてくれたから」
「僕が遠井君の希望だったのですか」
「そうだったんだよ」
微笑んでだ。希望は真人に言った。
「支えでいてくれたから」
「支えもまた、ですか」
「うん。希望だったんだよ」
彼自身の名前でもあるこの言葉をだ。希望は言っていく。
「僕にとって。ずっとある」
「いえ、僕は」
「希望じゃないっていうのかな」
「そんな大それたものじゃないですよ」
気恥ずかしそうに笑っての返答だった。
「とても。そんなのじゃ」
「ないっていうのかな」
「そうです。僕は遠井君の友達というだけですよ」
「いや、友達だからね」
「希望
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ