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イベリス
第三十三話 葛飾のアイスクリームその二

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「階級が下だと辛くあたる」
「そんな人だったの」
「それで丹波さんは随分殴られたそうよ」
「昔の軍隊だと鉄拳制裁普通よね」
「今じゃ問題になるけれどね」
 自衛隊でもそれを警務隊に言えば殴った相手は只では済まない、だから警務隊とも仲がいいと悪いことはないかも知れない。
「当時は普通で」
「丹波哲郎さんは殴られていたのね」
「川上さんに、その態度の違いがあまりに酷くて」
 それでというのだ。
「回覧が回ったそうよ」
「回覧っていうと」
「後ろから撃てって」
 その様にというのだ。
「言われてたとかね」
「相当嫌われていたのね」
「そしてね」
 愛はさらに話した。
「まだあるの」
「まだ!?」
「そう、戦争が終わって」
 そうしてというのだ。
「川上さん軍隊でいじめていた人のところに行って謝って回ったそうよ」
「それはいいことじゃないの?」
 咲はいじめを謝罪したと聞いてこう考えた。
「反省して自分からって」
「いや、戦争終わったでしょ」
 愛はその咲にいささか剣呑な調子で話した。
「日本が戦争に負けて」
「ええ」
「それで日本軍って何でもかんでも悪いってされてたでしょ」
「軍隊の暴力とかね」
「そのことを言われる前にね」
 まさにその前にというのだ。
「これは私の考えだけれど」
「川上さん自分でなの」
「相手の人達に謝ってね」
「ことを収めたの」
「それで丹波哲郎さんのところにも来たそうだけれど」
「丹波さんはどう思ったのかしら」
「人間の本性を見たって言われたそうよ」
 この話も後世に伝わっている。
「どうもね」
「人間の本性って」
「これでわかるでしょ」
「ええ、感覚でね」
「私もこの話を聞いてね」
 愛にしてもというのだ。
「そう考えてるのよ」
「川上さんは反省していなくて」
「言われる前にね」
「ことを収める為に動いたの」
「相手の人が言えない様にね」
「頭いいけれど」
「いいお話じゃないでしょ」
 こう咲に話した。
「これって」
「どうもね」
「他にも選手に凄く冷たかったみたいだし」
「そのこともあって」
「私は川上さんって人嫌いよ」
「そうなのね」
「まあ叔父さんは元々巨人自体が嫌いでね」
 咲の父はというのだ。
「川上さんとは別にね」
「巨人が嫌いで」
「それで巨人の人が監督だったことが多くてその時に強かった西武もね」
「好きじゃないのね」
「そうみたいよ」
「そうなのね」
「ええ、まあ私は別に西武はね」
 愛にしてはというのだ。
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