風船
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」
初春の中に、それはひんやりとした温度を清香に伝えてくる。
一瞬だけ水晶玉の中に青い闇が見えた気がしたが、目をこするとそれはただのガラス玉に戻っている。
「……?」
首を傾げた清香は、即座に水晶玉を手放した。
突如として閃いた青い光に目を奪われる。かと思えば、白黒を繰り返す清香の視界からは、水晶玉の姿は完全に消えていた。
「これ……何がどうなってるの……?」
もはや魔法としかいいようのないその不思議現象に、清香は言葉を失った。
「え? これ、どうやったの……?」
それに対し、ピエロの返答は微笑。
やがて、それがカーテンコールだったのだろう。
「どうぞ?」
ピエロが、コヒメへ役割を終えた風船を差し出す。
青い風船を受け取ったコヒメは「ありがとう!」と礼を言った。
ここまでされたら、小銭を入れないわけにはいかないと感じた清香は、財布から小銭を取り出す。
私もコヒメを守る旅の費用のために何か始めようかな、と小銭を見下ろしていると。
「あっ!」
コヒメの尖った声に、清香は顔を上げた。
見上げれば、今もらったばかりの風船がコヒメの手を離れ、青空へ浮かび上がっていく。
「ああ……」
残念そうな顔を浮かべるコヒメ。そんな彼女へ、清香も膝を曲げて目線を合わせた。
「ああ……飛んで行っちゃったね」
すでに、清香の刀使の能力を駆使しても届かないほどに高度を上げてしまった風船。
そして。
「ボン」
ピエロのその合図とともに、風船が破裂した。
「うわっ!」
驚いて体を縮こませるコヒメ。だが、遠隔ながらも風船を破裂させたパフォーマンスも受けたのか、風船の破片に拍手を送った。
「え……風船割っちゃうんだ。でも、これはこれで……」
すごい、と清香はピエロの足元を見下ろした。
大抵この類の大道芸人は、足元に小銭入れ用の缶を置いているイメージがあったが、それはどうも見当たらないようだった。
だが、そんな清香の視界に、ピエロの手が割り込んできた。
「え?」
「小銭は結構」
初めてピエロの肉声を聞いた。
青いメッシュが特徴的なピエロは、にやにやと笑みを浮かべたまま、清香からコヒメに視線を移した。
「代わりに……」
ピエロの目が、妖しく光る。
彼は懐より、蒼い何かを取り出した。持ち手と、上の部分が金色の拘束具で封印されているそれ。
それは、スイッチ一つで開き、アイマスクの形状となる。
そして。
ピエロの目が、コヒメを舐めまわすように移す。
「その子をもらおう」
ピエロはそのまま、アイマスクを顔に被せる。
すると、アイマスクよ
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