もうひとつの“家族”(爽々波純バースデー2021)
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「ただいま」
今年の夏休み以来、久し振りに実家の敷居を跨ぐ純。
帰宅を知らせる四文字に、家の奥からダンディな男性の声が返ってくる。
純の父親、爽々波弾だ。
「おかえり。もう少しゆっくり帰って来ても良かったんだぞ?」
「父さんと母さんに、早く会わせてあげたくてさ」
そう言って純は、自分の背に隠れている彼女を指し示す。
彼女……雪音クリスは遠慮がちに顔を覗かせると、純の隣に並んだ。
「お、おじさん……おっ、お久し振り……です……」
珍しく丁寧な口調になるクリス。
彼女の顔を見た弾の表情は、一瞬で変わった。
「か、母さん!ちょっと来てくれ!!」
慌てて家の奥へと走っていく弾。
やがて彼は、純によく似た顔立ちをした金髪の女性を連れて来た。
純の母親、爽々波アンヌだ。
「どうしたのよ、あなた。そんなに慌てて──」
アンヌもまた弾と同様、驚愕と歓喜とが入り交じった表情へと変わる。
空いた口を両手で抑え、見開かれた目で真っ直ぐにクリスを見つめる。
「クリスちゃん……クリスちゃん、なのよね?」
「おばさんも……お元気そうで……なんてゆーか、その……」
数年ぶりに顔を合わせる、幼馴染の両親。
何と挨拶すればいいのか分からず、言葉を詰まらせるクリス。
だが、全てを言葉にする前に動いたのは、アンヌの方だった。
玄関の方まで走り、クリスを抱き締める。
背中に手を回して抱擁し、優しく静かに囁いた。
「おかえりなさい。元気してた?」
「ッ……!!」
懐かしい声と、忘れていた温もり。
遠い存在となっていた、母親という立場の人間から与えられるそれは、クリスの心に染み渡っていく。
その時、クリスの中で押しとどめていた感情が溢れ出した。
頬を伝う熱い一筋。ぼやける視界と、熱を孕んでいく目頭。
自然と口から漏れたのは、言葉に出来ない嗚咽。
この日、雪音クリスは幼い少女のように泣きじゃくった。
純と弾は、何も言わずにそれを見守る。
見守りながら、目と目を合わせて会話していた。
(純、遂に夢を叶えたんだな)
(うん。ようやく叶えられたよ、父さん)
ようやく泣き止んだクリスから離れ、アンヌは逞しくなった息子と、数年ぶりに再会した親友の娘を交互に見る。
「2人とも、本当に大きくなったわね」
「わざわざ誕生日に合わせて連れて来るなんて、驚いたぞ」
「驚かせる為にそうしたんだよ」
「ほんっと、おばさん達も変わってねぇなぁ」
久し振りに笑い合う4人。
クリスとの再会、そして同棲については既に報告していたが、直接顔を合わせたのは今日が初めてだった。
それから、純は真剣な顔になると、両親の顔を
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