火は波に呑まれ、鎮まる話。
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は空のみ。
そう、僕は言ったんだ。
「『冨嶽三十六景』! 神奈川沖、浪裏すさびッ!」
お栄ちゃんが、絶対に勝つよって。
「…。」
ウィッカーマンの火がついに灯らなくなる。
真っ黒な木炭の塊と化したそれは、ボロボロと崩れ落ち、次第に原型も留めない住みの山となって消滅した。
「やったじゃないか北斎!!」
キルケーや森長可からそう言われるも、そんなことは一切気にもとめずお栄ちゃんはおかまいなしに僕の元へと駆けてきた。
「マイ!!」
「お栄ちゃん…。」
勝った安心からか、なんとか踏ん張っていた両足の力が抜けてふらりと倒れてしまう。
しかし、アスファルトに顔面をぶつける前にお栄ちゃんが見事キャッチ。
僕の顔は柔らかなお栄ちゃんの胸にうずめられる形となった。
「おめでとう…勝てるって信じてたよ。」
「んなこたどうでもいい!ともかく医者に診てもらわねぇと…!!」
そういい、僕の怪我の状況を確認するべくくるりと回し、背中を見るお栄ちゃん。
しかし、
「…?」
「お栄ちゃん?」
背中の怪我の様子を見たお栄ちゃん。
振り返ってみると、なんとも不思議な表情をしていた。
「こいつは…どういうことだい?」
「え?なに?」
と、背中をペタペタと触り始めるお栄ちゃん。
いきなり何をするんだと驚いたけど…変だ。
傷口を思い切り触られれば当然痛い。
けど、痛みが来ない。全くと言って良いほどに。
「お前…それ…。」
近野さんが僕の背中を見て指さしながらそう言った。
どうしてみんなそういった反応をして、どうして痛くないのか?
答えは
「治ってる…!」
「嘘だ…骨まで見えて…背中全体も焼けただれてたのに…!」
治っていた。
あんな大怪我をして、十分もせずにここまで治っていたんだ。
「ほら、これ。」
「うそ…。」
近野さんが証拠にとスマホで写真を撮り、それを僕に見せる。
画面に写された僕の背中は確かに、火傷のあと一つなく以前と変わらぬ背中のままだった。
「どうでもいいけどお前腰ほっそ。女みたい…。」
「そ、そんなことはどうでもいいでしょ!?それよりもどうして僕の背中が…」
「だろう?後ろ姿を見りゃ誰もが女と間違える。おれの自慢のますたあサ。」
そういって僕の背中を撫で、腰をゆっくりと触るお栄ちゃん。
変な声をあげそうになったけど、ここはなんとかこらえた。
「…ところで、誰だいあんた。」
「近野のどか。以前アンタが戦ったバーサーカーのマスターだよ。」
「…。」
先程までの態度は一転、お栄ちゃんはそう聞くとじっと近野さんを睨みつける。
「ほう…あんたが。」
「悪いとは思
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