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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
疾走編
第四十四話 理想と現実
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「一定の基準というのは」
「判り切った事じゃないか。戦えるかどうかという事だよ」
「では、我が艦隊は戦えると」
「当然じゃないか。君は戦えないと思うのかい?」
「戦えますね、確かに」
「だろう?ワイドボーンに言いたかったのは、慣熟訓練と錬成訓練は別だ、という事さ。まあそれだけじゃないけど」
「なるほど、それが答えですか」
「ワイドボーン少佐、来てたのか」
「お二人の姿が見えましたので。ここでこのまま答えを聞こうかと」
「そうですか…フォーク、当番兵に言って飲み物を。三人分な」
「はい」
「ではワイドボーン少佐、答えが出ましたか」
「はい…いいえ、分かった様な分からない様な…」
「そうですか。ですがそれも当然です。少佐の先程の指摘は間違ってませんから。少佐、我々の任務は何です?シンプルに考えてくださいよ」
「帝国に勝つ事、でしょうか」
「いえ、同盟を守る事です」
「中佐は帝国を倒せないと?」
「非常に難しいと考えますね。現状で同盟は百五十億人、帝国は二百五十億人です。単純に考えると、帝国が百億人死んでやっと対等です」
「それは…そうです」
「百億人殺す過程でこちらも被害は出ますから、対等になる事は有り得ないのです。勝つのが非常に難しいとなると、負けない戦いをせねばならない」
「はい。ですから艦隊の錬度を上げねばと」
「はい。それも大事です。ですが少佐、第一艦隊に在籍していた当時、多分同じ様な進言をした事があると思いますが、採用された事はありますか?」
「…ありません」
「負けない戦いをするには、数を揃えなくてはならない。だが数を揃える過程でも帝国との戦争は続いてますから損害は必ず発生する。そしてその損害は一定ではない。財務関係者からすれば悪夢ですね」
「……」
「損害を補充するにはお金が必要です。人件費、装備の生産費、消費財…しかし軍の予算は限られています。ですが年間の軍事予算は決まった額しかありません。予め計上された訓練計画、購入計画、人件費しかないのです。損耗を補填するにはどうすると思います?」
「予算の追加ですか?」
「そうです。追加分はどこから持ってくるのでしょう?」
「……だんだん答えるのが嫌になってきましたよ」
「はは、気持ちは分かります。追加分は後年度負担か、他の官公庁から予算の付け替えで補填するのです。人員もそうです。付け替えた分は補填しなくてはならないから、同盟政府は何をすると思います?」
「…借金。国債の発行ですか」
「そうです。政府だって余計な借金はかかえたくないから、軍に計画にない訓練や損耗はして欲しくないのです。訓練予算の追加なんて、とてもじゃないが認められませんよ。数を満たすだけで精一杯です」
「なんて事だ」
「仕方ありません、戦争中ですから」
「では、練度はど
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