第一部 1977年
新彊 その1
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暗くかび臭い一室
うずたかく積まれた書類の山の中にいた木原マサキは、この世界について調べていた
まず気に為ったのは故国、日本
国家元首の皇帝のほかに、政威大将軍なる不可思議な役職
そして将軍を輔弼する内閣制度、議会
三軍の他に、親衛隊のようなものがあるらしい
「不合理な社会制度をしているな」
資料からわかったのは19世紀中葉までの大まかな歴史の流れは一緒だが、細部が違う異世界に来てしまったということだ……
おそらく次元連結システムの影響で、本来の世界や次元を超越してしまったのだろう
次に気になったのは航空機だった
大型旅客機や爆撃機はあるが、戦闘機は写真資料や文献から類推すると元の世界より発達が止まっている。あっても1950年代までの水準だった
先日説明を受けた≪光線級≫という化け物の影響だろうか。
あるいは、戦術歩行戦闘機とよばれるロボットの開発の為に、航空機分野の発展は遅れてしまったのだろうか
実物を手にしてみて構造や性能を理解してみないと結論は出せないであろうと、考えていると兵士が呼びに来た
ここの司令官が呼んでいるのだという
しかし、人民解放軍の制度はよくわからない
何せ、階級制度を廃止した為に、誰がどの役職で、どの様な立場に居るのか良く判らない
精々分かるのは、制服の色から三軍の違いと、上着のポケットの数で指令員と戦闘員__古い言い方をすれば軍官(将校)と士兵(下士官・兵)_を判別することだ
これでは現場指揮官が戦死したときに、誰に引き継ぐかも決められていなくて混乱したのであろう
おそらくカシュガルに飛来した≪BETA≫への対応が遅れて、核爆弾投下やソ連軍への協力要請が遅延したのは≪プロレタリア独裁≫の負の一面のが強く作用した為であろうと、類推できる
時間を置かず、飛来した≪BETA≫への対応に、米軍は核攻撃を以てして成功していることを鑑みれば、そうであったと考察できる……
そのような思いを巡らせているうちに、呼ばれていた指揮所へたどり着いていた
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