第三十二話 夜の会話その八
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「あと面白いか面白くないかわからないもの買う時も」
「ゲームでもでしょ」
「漫画でも小説でもね」
「それでもよね」
「お金払ってだし」
自分自身のだ。
「だからね」
「決めるには勇気が必要ね」
「ええ、買うにしても買わないにしても」
どちらでもというのだ。
「そうよ」
「だからね」
「それでなのね」
「そう、何でもね」
それこそというのだ。
「決めるにはね」
「勇気が必要なのね」
「逃げることも決断なら」
「勇気が必要なのね」
「逃げちゃ駄目だって思って暴力受け続けていい筈ないでしょ」
母は言い切った。
「いじめでもお家の中でも」
「それはね」
「そのうち打ちどころが悪くて死んだり」
「自殺もなのね」
「あるから」
それでというのだ。
「また言うけれど自殺とかで死んだら終わりなのよ」
「だったら逃げた方がいいのね」
「人間圧倒的な暴力の前には無力になって考えられなくなるけれどね」
無抵抗になってしまってただ竦むしかなくなるのだ、暴力というものの恐ろしいところの一つである。
「それに対せないなら」
「逃げることね」
「お母さん前にDV受けてる奥さんから相談受けたの」
「そんなことがあったの」
「その時にも言ったのよ」
「逃げろって?」
「離婚しなさいってね」
その様にというのだ。
「それでね」
「その奥さんは娘さん連れて離婚してね」
「逃げたのね」
「旦那さんからね、それでね」
そのうえでというのだ。
「助かったのよ」
「よかったわね」
「慰謝料もたっぷり貰えたわ」
離婚の際のそれもというのだ。
「別れたご主人はその後DVが会社にもばれてクビになったわ」
「自業自得ね」
「それで今は鮪漁船に乗ってね」
「慰謝料稼いでるのね」
「そうなっているわ」
「全部自業自得ね」
咲も話を聞いて思った。
「その旦那さんの」
「身体中痣だらけになっていたから」
暴力を受けてというのだ。
「お母さんもこれは駄目だって思ってね」
「離婚して逃げろって言ったのね」
「そうよ、娘さんにも暴力振るってたし」
奥さんだけでなくというのだ。
「だから尚更ね」
「逃げる様に言って」
「助かったわ」
「そうなのね」
「死んだら元も子もないのよ」
今度は怒った声であった、その時のことを思い出して。
「それでよ」
「逃げることもなのね」
「時としてはね」
「いいことなのね」
「命あっての物種、死んだらね」
「それで終わりよね」
「よく殉教とか言うけれど」
母はこの言葉も話に出した。
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