第二十一話 与えられた試練その一
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第二十一話 与えられた試練
姫路城は日本においてとりわけ有名な城の一つだ。
白く彩られた建築当初のままの城は実に美しい。城壁に櫓に瓦、それにだった。
その石畳までが白で極めて美しい。そしてその小天守閣が二つ添えられた大天守閣もだ。
白く清らかだ。それだけ見れば城というよりは一つの芸術品にさえ見える。冬の夕暮れの中にその白い姿を濃紫の夜の中に消そうとしている天守閣を見てだった。
希望はまだ肩を抱いている千春にだ。こう行ったのだった。
「姫路城は何度か来たことがあるけれどね」
「どうしたの?」
「うん、こうして夜になろうってしている中で見るのはね」
「はじめて?」
「うん、はじめてだよ」
こう千春に言うのだった。天守閣を見上げながら。
「何か不思議だね」
「けれど昼と夜は何時でも絶対にあるから」
「こうした夜の天守閣もあるんだね」
「そうだよ。それでこの天守閣の一番上にね」
「あのお姫様がいるんだね」
「うん。おられるの」
千春の言葉は敬語になっていた。千春が滅多に使わないその敬語を聞いて。
希望はその姫が普通の相手ではないと思った。それだけの相手だとだ。
そのことを考えながらだ。彼はまた千春に言った。
「じゃあ今からね」
「今から行こうね」
「その人、人でいいよね」
「心は人間だよ」
「じゃあ人だね」
千春のことからだ。希望はこう悟った。それでだった。
希望はその姫も人だと認識した。そのうえで。
二人で天守閣に向かって一歩足を踏み出す。それからだった。
天守閣を一階一階上がっていく。その中で千春はこう希望に言った。
「あのね」
「お姫様は天守閣の一番上におられるんだよね」
「うん、そこだよ」
「そう。そこにおられるよ」
「じゃあ今からね」
こう言うのだった。
「その頂上に行こう」
「そうしようね。そこに皆いるから」
「お姫様だけじゃないんだ」
「そうだよ。皆いるんだよ」
「ううん。お供の妖怪達かな」
妖怪と人を同じ存在、心がそれならばだと認識しての言葉だった。
「一緒にいるのは」
「そうだよ。皆いるからね」
「どんな感じかな」
その妖怪達のことを考えながらあがっていって。そしてだった。
二人で天守閣の頂上まで来た。そこは。
奥の間、殿様がいる様な場所になっていた。奥は一段上になっていて御簾が下げられその奥はあまりよく見えない様になっている。
そして部屋の周りにだ。千春の言う通り皆がいた。
顔が赤く大きな一本角の人間に近い昔の和服と袴を着た存在がだ。千春を見てこう言ってきた。
「よお千春ちゃん
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