第二十話 災いの雷その十三
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その二人にだ。彼等は言ってきたのだ。
「これをどうぞ」
「飲まれて下さい」
「これは」
希望は彼等が差し出してきたものを見た。それは。
グラスの中にある緑の液体だった。その緑は鮮やかなエメラルドグリーンだ。
その液体を見てだ。希望は言うのだった。
「ジュースだよね」
「この森の力を全て集めたジュースです」
「それです」
「森の力を全て」
「山ともいうでしょうか」
「とにかくここにいる私達全員のです」
力をだ。凝縮させたものだというのだ。
「これを飲まれてです」
「お城に行って下さい」
「皆の力を?」
千春は希望に支えられていた。そのうえでだ。
彼等に顔を向けてだ。こう言ったのだった。
「千春にくれるの?」
「力と言えば大袈裟ですか」
「栄養ドリンクの様なものです」
「これを飲まれればかなり違う筈です」
「お嬢様はかなり元気になられる筈ですから」
根本的な解決にはならなくともだ。そうなるからだというのだ。
「是非。飲まれて下さい」
「希望様も」
「いや、僕はいいよ」
希望は自分の分はこう言って断った。
「それはね」
「宜しいのですか」
「希望様は」
「僕の分は千春ちゃんにね」
自分が肩を抱いて支えている彼女を見ての言葉だった。
「あげてくれるかな」
「そうしてですか」
「お嬢様を」
「うん。少しでも元気にさせて」
だからだというのだ。
「僕はいいよ」
「わかりました」
執事達は希望の言葉に頷いた。そうしてだった。
千春に彼の分のジュースも渡した。千春はそれを受け取ってから。
希望に顔を向けて微笑んでこう言った。
「有り難う。じゃあね」
「そのジュースを飲んでからだよね」
「あのお城に行こう」
姫路城、そこにだというのだ。
「そこに行こうね」
「そうしよう。それじゃあね」
「うん、じゃあ」
こう話してだ。千春はそのジュースを飲んでからだった。
希望、今も自分を支えている彼にこう言ったのだった。
「今からあのお城に行こうね」
「そうしよう。今からね」
二人で話してだ。そのうえでだった。
希望にだ。あらためて言ったのだった。
「行くよ」
「うん、じゃあ」
二人で言ってだ。千春はあの術を使った。寄り添い合う二人の姿は白い光に包まれた。そして千春の運命を救えるかも知れないその姫の下に着いたのだった。
第二十話 完
2012・6・6
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