第六百四十一話 餓鬼道その十二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「身内を殺していた、だからだ」
「人気がないか」
「世界の歴史ではそうした人物も多いが」
身内を殺す者はというのだ。
「やはりあまりな」
「人気はないか」
「自分の親兄弟を手にかけることは罪だ」
このことは紛れもない事実だというのだ。
「だからな」
「その罪を犯したからか」
「どうしてもな」
「頼朝さんは人気がないか」
「日本でもな、家臣も邪魔だと思えば」
その時はというのだ。
「殺していた」
「家臣でもか」
「そして誰もいなくなった」
タムタムはこうも言った。
「源氏はな」
「誰もか」
「身内で殺し合った結果な」
頼朝を含め五代に渡ってそうしてきてだ。
「血が完全に絶えた」
「因果な話だな」
「愚かなな、シェークスピアの様にだ」
彼の作品の様にというのだ。
「源氏は身内で争ってな」
「誰もいなくなったか」
「後には誰もいなくなった、傍流はずっと残ったが」
「直系はか」
「いなくなった」
棟梁とされる為義の流れを汲む者はというのだ。
「本当にな、平家は保元の乱以外では争わなかった」
「悪役なのにか」
「一切な」
「そうだったのか」
「身内はまとまり愛情深く家臣にもな」
「愛情があったか」
「源氏は幕府を開いても粛清が続いたが」
これは執権の北条氏の時代になってもだった、北条氏は自分達の権勢を脅かす御家人達を次々と滅ぼしていったのだ。
「しかしな」
「平家はか」
「そうしたこともなかった」
「粛清もか」
「政敵はいたが」
それでもというのだ。
「最後までまとまっていた」
「そう聞くと平家の方がいいな」
フランツも話を聞いて思った。
「それなら」
「それだけ清盛さんがしっかりしていてだ」
悪役である筈の彼がというのだ。
「そしていい人だった」
「悪人ならもっと酷いか」
「粛清もだ」
これもというのだ。
「源氏や鎌倉幕府の様にな」
「行っていたか」
「その筈だ、頼朝さんは少しでも邪魔と見ると消した」
それも何処までも追ってだ。
「何度も言うが身内でもな」
「歴史では多いがな」
「しかしよくは思われないな」
「それはその通りだ」
フランツもこう答えた。
「そんな奴はな」
「だからだ」
「お前も頼朝さんは好きじゃなくてか」
「清盛さんが悪人とは思えない、頼朝さんは子供も平気で殺すが」
「清盛さんは殺さない」
「その差も大きいしな」
それでというのだ。
「俺は平家物語では清盛さんの方が好きだ」
「そういうことか」
「源氏は兎に角酷い」
タムタムは苦い顔で言った、そうしてだった。
持っているワインを飲んだ、それからまたおかわりをしてフランツとの話を続けていくのであった。
餓
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ