相反する信条
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輝かせる。青信号を二人で駆け出し。
「……ランサー」
通行人の中、聞こえてきたその一言。
美炎は気にせずに進もうとしていたが、隣の響が足を止めた。
「響ちゃん?」
横断歩道の真ん中。
信号が点滅しているというのに、響は来た道を振り返っていた。
さっきまで明るい顔だった響は、驚いた顔のまま静かに振り向いた。
振り向いた先の人物。
無数の往来の中、響を睨んでいる人物がいた。
「……あれは!」
その姿に、美炎も思わず顔が強張る。
彼は。
黒い民族衣装と、頬に赤い紋章が描かれている彼は。
「ついてこい」
それは言葉ではなく、顔の動き。
だが、美炎は、彼に付いて行かなければならないと感じていた。
それはどうやら響もまた同じらしい。
響に続いて、美炎もまたその後に付いて行った。
「ソロ……」
ソロ。
響が口にした名前で、美炎はようやくその名前を思い出した。
美炎が煉獄と出会ったそもそもの原因。
超古代文明、ムーの生き残りであり、その誇りをかけて聖杯戦争にたった一人で参加している人物。
彼が美炎と響を連れてきたのは、誰も立ち寄らない高架下。見滝原を環状に走る高速道路、その下には誰も立ち入らない場所があった。
整備された川からは、地上の様子も見えなければ、入り組んだ道路に隠れて太陽さえも見えない。
「久しぶりだな……ランサー」
車が行き交う音の中で、ソロは強く、鋭い瞳で響を睨んでいた。
彼の目に、響は生唾を飲む。
言葉を発さない響に対し、ソロは続ける。
「随分なお人よしだな。キサマ……」
ソロは吐き捨てた。
響はそれに対し、むっとした顔をする。
「別に、人を助けるのに、軟弱も何もないでしょ」
「キサマになんの関係がある? なぜ赤の他人に、そこまで肩入れする?」
「そんなの、理由なんてないよ。ただ、困ってる人を放っておけないだけ」
その返答に、ソロは苛立ちを見せる。
「こんな奴に、ムーは滅ぼされたのか」
「……へ?」
ムーを滅ぼした。
その言葉の意味を理解するのに、美炎は数秒時間を必要とした。
だが、その間に響の表情が陰る。
「そうだよね……あなたにとって、わたしは絶対に許せないよね……」
ソロは無言のまま。
だが響は続けた。
「結果的には、わたしがムーを滅ぼしたから……わたしを恨んでいるよね」
「ムーって……ムー大陸? それを……滅ぼした? 響ちゃんが!? いや、そもそもランサーって響ちゃんのこと? ランサーって……え? え?」
次々と出てくるカミングアウトに、美炎は空いた口が塞がらなかった。
だが、それに対するソロの答
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