相反する信条
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「ってことは、わたしたち、仲良く迷子ってことだよね」
「う……はっきり言われると辛い……」
美炎は俯いた。
立花響。
そう自己紹介された少女と、美炎は見滝原の見知らぬ地区を歩いていた。
夕方近く。どうやって図書館からここまで歩いてきたのか分からなくなる距離。清香に連絡したり、可奈美やハルトに頼ったり、地図アプリを起動しても、あまり場所はハッキリと分からなかった。
「ところで、響ちゃんはなんで迷子になったの?」
「あー……それが、迷子のお母さんを探して、やっと見つけたと思ったら……」
「自分が迷子になっちゃったのね……大丈夫?」
「こんなの、へいきへっちゃらッ! ……お?」
響と肩を並べて歩いていると、道端より声が聞こえてきた。
「あ、響ちゃん?」
「ごめん、美炎ちゃん! おばあちゃん、大丈夫ですか?」
見れば響は、横断歩道を渡ろうとしているおばあちゃんのもとへ向かっていった。
見ただけで驚くような大荷物を背負ったおばあちゃん。何が入っているのかと問いただしたくなるような風呂敷と両手の荷物は、美炎も思わず駆け寄ってしまうほどだった。
「うわ、何この荷物!?」
「分かんないけど、困ってるみたい! ……ってええ!? 美炎ちゃん、別にわたしが助けるから、美炎ちゃんはいいんだよ?」
「ここまできたら、わたしも手伝うよ! おばあちゃん、荷物持ってあげる!」
「ありがとうね……」
「わ、わたしも……!」
美炎と響は、それぞれ大荷物を持つ。
向かい側へ渡り、そのまま彼女の孫の家まで運んだあと。
「ない……ない……」
道路の真ん中で、中年男性が屈んでいた。
スーツ姿の彼は、困り果てた表情で道路に触れ回っており、思わず引き気味になってしまう。
傍らに放置されている鞄からは、白い資料が少しはみ出ており、より悲壮感があった。
「あの、どうしました?」
響は迷いなく彼に声をかける。
中年男性は顔を上げることなく答えた。
「レンズ……コンタクトレンズを落として……ああ、これから大事な営業先との約束があるのに……!」
「え? コンタクトって……落とすことあるんだ」
「それは大変ですね! 手伝いますッ!」
響は食い気味に屈んだ。すでに彼のコンタクトレンズを探すために、冷えたアスファルトをベタベタと探している。
「響ちゃん動くの早っ!」
「ごめん美炎ちゃん。わたし、ちょっとこの人の手伝いするから! 先に行ってて!」
「いや、わたしも手伝うよ!」
美炎も響に倣ってコンタクトを探す。
だが。
「って! 全然見つからないじゃん!」
美炎が叫ぶ。
二月とはいえ、寒風吹き荒れる中。
さすがに手が
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