第三十二話 夜の会話その二
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「別に直前に根詰めてしなくていいわよ」
「普段通りでいいのね」
「そうよ」
「まあそうしないと不安だし。それとお母さん今何してるの?」
咲は牛乳を飲みながらリビングで何か手を動かしてる母に問うた。
「一体」
「編みものしてるの」
「ああ、それね」
「好きだからね」
趣味だからだというのだ、母は他にも裁縫も趣味にしている。実は手芸全般が好きでよく手を動かしているのだ。
「それでよ」
「やってるのね」
「そうよ、今度の冬に着るセーター編んでるの」
今からそうしているというのだ。
「あんたとお父さんの分も編んでおくわね」
「有り難う」
「いいのよ、手袋とマフラーとニット帽も編んでおくわね」
こうしたものもというのだ。
「それでいいわね」
「楽しみにしておくわね」
「あとね」
母は娘にこうも言った。
「腹巻きもどう?」
「腹巻き?」
「そう、どうかしら」
「腹巻きは別に」
「いらないのね」
「いいわ、というか若い女の子が腹巻きしたら」
どうかとだ、咲は母に言った。
「十代としてはね」
「ださいっていうのね」
「完全におばさんじゃない」
「それ付けて外に出たら誰も声かけないでしょうね」
「ジャージにサンダルでこの髪型と眼鏡でね」
咲は今の自分の格好も話した、見れば見る程何の色気もない。生活集にあまりよくない意味で満ちている。
「腹巻きだと」
「もう完璧ね」
「夜道を一人で歩いても」
危ないとされるその行為を行ってもというのだ。
「もうね」
「襲われないのね」
「露出が多い服なら」
「ミニスカートとかキャミソールとか」
「そんなので夜道一人で歩いていたら」
そうすればというと。
「危ないわよ、人気のない場所をね」
「それは絶対に駄目よね」
「けれどね」
「今の私みたいな恰好で」
「それでね」
「腹巻きをしていたら」
「もうね」
それでというのだ。
「誰も襲わないわよ」
「色気がないから」
「それでガニ股で腰を曲げて歩いたらね」
歩き方の話もした。
「そうすればね」
「完璧ね」
「ええ、ださい恰好や歩き方もね」
「襲われないコツなのね」
「その一つよ、まあ一番いいのは」
「最初から夜道を一人で歩かないことね」
「そう、お昼でも危ない場所はね」
決してというのだ。
「それが一番よ」
「そうなのね」
「けれど実際ジャージにサンダルで」
母は今の咲の恰好をあらためて見て話した、普段の彼女と違いその身なりには可愛さも色気もない。
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