暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギアGX〜騎士と学士と伴装者〜
第17節「欧州からの学士」
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
にとは言えまい」

だがヴァンは、しかし、と付け足す。

「忠告。我々を厭う者達の魔の手は、広がりつつある。君もいつ狙われるか分からない。私も彼も、君が心配なんだ」

この時代、錬金術師は魔女狩りによって処刑される者も少なくなかった。
魔術と科学の境が曖昧な時代だったからこそ、人体や自然の神秘を解き明かそうとする者達は、神を冒涜する異端者として扱われてしまう事が多かったのだ。

「最近は、人々に正しい知識を広めようとした錬金術師を貶め、魔女狩りに追い込む輩が各地を逃げ回っているらしい。君も用心したまえ」
「ああ、気をつけておくよ」

2人はふと、台所に立つキャロルの背中を見つめる。

鼻歌交じりにお茶を用意している彼女の背中に、イザークはぽつりと呟いた。

「ヴァン。もしもの時は……もしも、僕に何かあった時は、キャロルの事を頼む。君とアダムになら、あの子を任せられる」
「……本気なのか?」
「本気だよ。協会なら、あの子を守ってくれるだろう?」

丸眼鏡の奥から覗く、親友(とも)の真剣な眼差し。

ヴァンは暫くそれを見つめると、やがて溜め息を吐いた。

了承(わかった)、約束しよう。だが、無理はするな。不味いと思ったら逃げる事だ」
「場合によるかな……。逃げる事が正しいとは限らない時もある」
「……宣誓。君の頼みは聞くが、君からも私に誓って欲しい」

ヴァンはもう一度、キャロルの方を見る。

かつて何度か顔を合わせた親友の妻。
その面影を少女の横顔に重ねながら、ヴァンは続けた。

「せめて、キャロルが立派なレディになるまでは生きろ。それが父親としての、君の義務だ」
「……ああ、そうだね。彼女の……リースの分まで、僕はキャロルと一緒に居なくちゃいけない」
「同意。娘を独り残して逝くなど、私が許さないぞ。せめて嫁入りまでは見届けろ」
「嫁入りかぁ……。キャロルの花嫁姿……きっと綺麗なんだろうなぁ……」

と、そこへキャロルがお茶の入ったコップを手にやって来る。

「パパ、先生、なに話してるの?」
「キャロルがお嫁に行ったら寂しくなるな、とイザークがな」
「そ、そこまでは言ってないぞ!?いや、寂しくないわけじゃないけど……」
「ええ?わたしがパパを1人にするわけないじゃない。わたしが居ないとご飯も食べられないんだもの」
「ううっ……。そ、それまでには、命題を解き明かすさ!」
「ふふっ、楽しみにしてるね!」
「命題?イザーク、君、娘にどんな命題を与えられたんだ?」

先程までの暗い雰囲気から一転。
小さな家に、再び活気が満ち満ちる。

夕陽が落ち往く秋空の下、絶えることのない笑い声と共に、親娘と学士は楽しい時間を過ごすのだった。

──それがある日、突然に奪
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ