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戦姫絶唱シンフォギアGX〜騎士と学士と伴装者〜
第17節「欧州からの学士」
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「あ!先生!」

紳士の名はヴァン・フィリップス・グリム。
今、翔と語らっている男だった。

「やあ、キャロル。今日も元気そうだね」

そして少女の名は、キャロル・マールス・ディーンハイム。
現在、翔たちと敵対関係にある少女の、ただの町娘だった頃の姿だ。

「えへへ。先生、今日はどんなご用事で?」
「返答。我が友イザークに頼まれていた薬草と鉱石を届けにきたんだ」
「パパなら今、顔を洗ってるところ。すぐに来ると思うから、上がってて」
「的中。やはりいつものアレか……では、お言葉に甘えて」

ヴァンは玄関前でマントを脱ぎ、埃をはらってから家に上がる。
丁度、イザークが顔を拭き終えた所だった。

「やあ、イザーク」
「ヴァン!元気してたかい?」
「当然。医者が不養生では話にならないからね」
「君らしいね。流石は”放浪の学士“だ」
「最近はただの学士さ。しばらく放浪してないからね」

たわいもない会話の後、ヴァンは肩がけにしていた鞄から薬紙と植物、鉱石の入った箱、そして2冊の本を取り出す。

「さて、本題。これが君に頼まれていたものだ。ちゃんと世話すればこの土地でも育つだろう。育て方と生態、それから成分と用途については、これを読んでくれ。もう1冊はその箱に詰めてきた各々の鉱石に関するものだ。素手で触るんじゃないぞ?」
「助かるよ。これで更に研究が捗る」

箱の中身を改めながら、イザークはヴァンに感謝を述べる。

ヴァンはそれを微笑みで受け止めると、もう一度鞄に手を入れた。

「それともう1つ……キャロル」
「なぁに?」
「授与。君への贈り物だ」
「わあ……新しい本!先生、ありがとう!!」

ヴァンから受け取った本を、キャロルは大事そうに抱える。
読書が何より好きな彼女にとって、父の親友にして師であるヴァンの来訪は、新しい本が増える特別な日でもあるのだ。

「本当に、いつもありがとう。わざわざ娘にまで色々持ってきてくれて」
「推奨。幼子らは多くを学ぶべきだ。今は小さくとも、幼子たちこそ、この世界の未来をより良くする綺羅星なのだから」
「先生、今度の本はどんな本なの?」
「今度のはとてもワクワクする筈だ。なんと──」

それから暫く、親娘はヴァンと歓談を続ける。
遠い異国の話や互いの近況など、積もる話は尽きることがない。

やがて、キャロルがお茶を出していない事を思い出し、台所へと向かう。

それを見計らうように、ヴァンは声を潜めた。

「イザーク。本当に、我々と共に来てはくれないのか?アダムも君を待っている。きっと喜ぶぞ?」
「気持ちは嬉しいが、私は今の生活を続けるよ。この村の人達は、まだ僕を必要としてくれているからね」
「そうか……。君がそう言うなら、無理
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