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八条学園騒動記
第六百四十一話 餓鬼道その一

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                餓鬼道
 二年生、自分達と同じ学年である彼と別れてからだった。フランツはタムタムにあらためて話した。
「仏教だとそうなるんだな」
「ああ、餓鬼のことだな」
「そうだよ、あまりにも浅ましいとか」
「そうだ、生きているうちにな」
「心が餓鬼になってか」
「そしてだ」
 そのうえでとだ、タムタムはフランツに答えた。
「死ねばな」
「本物の餓鬼になるか」
「生まれ変わってな」
「そうなってか」
「ずっと餓えと渇きとな」
「痛みに苦しめられるか」
「そうして生きていく」
 そうなるというのだ。
「ずっとな」
「一万五千年の間か」
「そうだ、人間の一生は百年だが」
 この時代はそれ位である。
「しかしな」
「餓鬼は一万五千年か」
「百五十倍だが」
 人間の一生を百年としてというのだ。
「その長い歳月をな」
「苦しんで生きるか」
「ずっとな」
「それは嫌だな」
「それは報いだ」
 タムタムは言い切った。
「あまりにも浅ましく卑しく生きたな」
「それのか」
「只の悪事よりも醜いことばかりしていたからだ」
「餓鬼になってか」
「ずっとだ」
 その一万五千年の間というのだ。
「苦しんでな」
「生きていくか」
「それでまた生まれ変わる」 
 一万五千年後というのだ。
「そうなる」
「絶対嫌だな」
 フランツはここまで聞いてこう述べた。
「餓鬼になるのは」
「誰でもそうだ」
 タムタムはこう答えた。
「それこそだ」
「そうだな、地獄に堕ちるよりもな」
「嫌だな」
「そう思った」
「何しろ人の出したものを食う餓鬼もいる」
「出したものか」
「それをな」
 それが何かはタムタムはあえて言わなかった、言わずともわかることだからだ。
「食う餓鬼もいるんだ」
「他のものは食えないのか」
「食えない」
 これがというのだ。
「臭くて汚くておそらくこれ以上はないまでにまずいな」
「あれをか」
「食いたい奴はいないな」
「いたら相当な変態だろ」
 フランツは真顔で答えた。
「いるかも知れないがな」
「いるらしいがな」
「相当な変態だな」
「俺もそう思う」
 タムタムも本気だった。
「その人それぞれの好みでもな」
「流石にあれはな」
「ない」
 普通はというのだ。
「俺には理解出来ない」
「そうだな、そしてその出したものしかな」
「食えない餓鬼もいるか」
「当然餓鬼にもわかる」
 彼等にもというのだ。
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