引ったくり犯
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「う……」
美炎は、頭を抑えながら呻き声を上げた。
「やっぱり何回来ても、全く何も手がかりなんてないよ……」
美炎はそう言いながら、今出てきた建物を見上げた。
見滝原図書館。見滝原の中でも指折りの蔵書数を誇る施設。
この場所で、コヒメが無害だと証明する証拠を探しているものの、美炎は元来本を読むのが苦手な部類。
よって。
「結局、ほとんど私が調べてるけどね」
「う……ごめん清香」
美炎が肩をがっくりと落とす。
「昨日も、わたしが可奈美と一緒に行っている間、調べてくれてたんだよね」
「手がかりになりそうなものあまりなかったけどね」
清香がため息をついた。
「今日は、コヒメちゃんも連れてきてよかったのかな?」
「大丈夫じゃない? 今日も煉獄さんがお店手伝ってくれているし。でも、わたしが見滝原を離れることができないっていうのは速くなんとかしないといけないしね」
美炎の言葉に、清香も頷いた。
一方、コヒメ。
美炎と清香の話にも我関せずとばかりに、彼女は今図書館で借りてきた絵本を見下ろしていた。
「コヒメ。……何読んでるの?」
「本」
端的に答えたコヒメ。だが、コヒメはピタリとも動かずに読み進めている。
本の中身は、大きなイラストに、文字が散りばめられている。絵本のようだった。
「これ……とっても面白い」
「面白い? 何々? 白雪姫? シンデレラ? それとも……」
「日本神話だね」
コヒメを挟んで反対側。清香が屈んで、彼女の表紙を覗き込む。
「え? にほ……何? 絵本って、三匹の子豚とか赤ずきんとかじゃないの?」
「美炎ちゃん……刀使なんだから、多少はこういう知識持っていてよ。コヒメちゃん、面白い?」
「ちょっと……面白い」
コヒメが、鼻から息を吐いた。
彼女が呼んでいるページ。そこには、大きな八体の蛇のイラストが掲載されていた。
「うわっ! 蛇! 大っきい! 一杯いる!」
「これ、八岐大蛇の伝説だね」
驚く美炎に対し、清香は中腰で話を進める。
「山田さんのお家?」
「違うよ。八岐大蛇」
清香は訂正した。
「で、その山田のオロチは……」
「だから……! 八岐大蛇だよ」
「みほの。ひょっとして頭悪い?」
「なっ!?」
コヒメの何気ない一言で、美炎は凍り付いた。
一方、コヒメはやっぱりと言った顔で「あー」と言葉を伸ばす。
「大丈夫大丈夫。人には出来ること出来ないことがあるから。みほのもきっといいことあるよ」
しゃがんだ美炎の頭を撫でるコヒメ。
涙目になる美炎は、コヒメの手が動くごとにどんどん悲しくなっていった。
「う……で、何て
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