引ったくり犯
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音をたてて地面に落ちた引ったくり犯。痛みに呻きながら、彼は手のトートバッグを手放した。
「もう、こんな悪いことしちゃ駄目だよ!」
「ひ、ひいいいいいっ!」
笑顔を見せる少女。それにすごまれて、引ったくり犯は一目散に逃げていった。
「すご……」
その一部始終を見届けて、美炎は口をポカンと開けていた。
一方、トートバッグを拾い上げた少女。彼女は笑顔で、それを美炎へ差し出した。
「はい、これ。盗まれちゃダメだよ」
「ああ、これわたしじゃなくて……」
「ああ、ありがとう……!」
追いついてきた、引ったくりされた女性。彼女は、息を大きく吐きながら、少女からトートバッグを受け取る。
「助かったわ……! 二人とも、ありがとう! 何かお礼をしなきゃ……」
「あ、いえいえ。これくらい、へいきへっちゃらッ!」
少女はそう言いながら、女性の礼を遠慮する。
「なんてこと……こんな世知辛い世の中に、あんた達みたいな殊勝な若者がいるなんて、おばさん嬉しいよ……」
「ああ、いいですから! 気にしないでください! ……ほら、君も!」
「う、うん!」
少女に促されて、美炎もまた頷く。
そのまま感涙していった女性は、手を振りながらその場を去っていった。
女性の姿が見えなくなったところで、美炎は少女へ言った。
「君すごかったね! 着地から全部、まるでヒーローみたいだったよ!」
「ありがとう! でも、今一番カッコよかったのは、わたしじゃなくて、最初から人助けをしようとしたあなただよッ!」
「いやあ、そんなことないよ……あ、それより、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「わたしも! 聞きたいことがあるんだ」
そして、美炎と少女は、同時に笑顔で言った。
「「ここ……どこ?」」
見滝原ではある。
それ以外、美炎にも少女にも、全く手がかりがなかった。
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