第百十四話 孔明、弓矢を奪うのことその六
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その中でだ。二人は笑顔で草薙に話す。
「朝には霧が出ますよね」
「水面に熱がかかって」
「!?それでか」
ここでだ。草薙もわかった。はっとした顔になって二人に話す。
「水面をああして。俺達の炎で打ってか」
「そうです。それで普通の霧より濃いものにしてです」
「敵の目を欺いてです」
そのうえでだというのだ。
「敵に弓矢を撃たせています」
「こうして」
「それでだ」
周瑜もいる。その彼女も草薙に話す。
「敵の弓矢を奪いそのうえで我々の弓矢を手に入れているのだ」
「それで藁で覆った案山子も用意しました」
「矢を撃たせて集める為に」
よく見えないことを利用した的だというのである。
「折角弓矢を手に入れるなら敵から手に入れるべきですし」
「敵の力も削げます」
「考えたものだな」
二人の話を聞いてだ。草薙は考える顔になり腕を組んで言った。
「そういうやり方もあるんだな」
「はい、兵法に敵の力を利用するというものがありまして」
「それを使いました」
「そうなんだな」
話を聞きながらしきりに頷く草薙だった。
その間にも敵の弓矢はひっきりなしに来る。それが暫く続いたところでだ。
孔明と鳳統は周瑜に述べた。
「もういいと思います」
「そろそろ霧も晴れますし」
「そうだな。霧が晴れれば策もばれてしまう」
周瑜も言ってだ。それでだった。
彼女は船を動かさせた。そのうえでだ。
敵陣から離れる。そうして離れてから甲板に出て案山子や船を見てみると。
弓矢がこれでもかという程突き刺さっている。それはどの船もだった。
その無数の弓矢を見てだ。軍師二人は満足した笑顔で言うのだった。
「これでいいですね」
「十万本はありますね」
「おいおい、本当に集めるなんてな」
実際に見てまた驚きの言葉を挙げる草薙だった。
「すげえな、これはまた」
「全くだ。私も考えられなかった」
周瑜も感嘆の言葉を述べる。
「ここまでのことはな」
「まさに天才軍師だな」
草薙もこう言うのだった。
「この二人がいるだけで全然違うぜ」
「ですからそう言うことを言われると」
「恥ずかしいです」
ここでまた顔を赤らめさせる二人だった。そしてそれを見てだ。
草薙は少し落ち着いてからだ。こう言ったのだった。
「じゃあこれで止めておくな」
「優しいのだな」
「俺は人の嫌がることはしない主義なんだよ」
微笑んでだ。草薙は周瑜にも話した。
「だからな」
「それでなんですか」
「ああ、そうだよ」
また話す草薙だった。
「それじゃあ帰るか」
「はい、そうしましょう」
「目的は達しましたし」
こうしてだった。孔明と鳳統は意気揚々と陣に戻った。そうして十万本の弓矢を劉備達に見せる
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