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冥王来訪
第一部 1977年
転移

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横たわる巨人の前に、軍用車が近づいた。
車を離れた場所に止めると、数名の男達が、後ろから飛び出す。
助手席から、降りた男の指示の下、目の前の物へ、駆け寄った。
鉄帽に、深緑の戎衣を纏っている。
彼等は、針の様な銃剣を付けた小銃を持って、近づく。
静かに、忍び寄ると、巨人から一組の男女が表れて周囲を伺う。
拳銃を手にした指揮官が、手招きをする。
立ち止まった兵士達は、銃を構え、呆然とする男女へ銃を構える。

指揮官は、銃を構えた右手に左手を添える。
そして、拳銃をゆっくり挙げて、彼らに、尋ねた。
「動くな。人民解放軍だ」


近くに止めた車からは、煌々と、前照灯が照らされる
灯火の中、一組の男女は、両手を上げて無抵抗の意思を示した。
その後、再び問うた。
「あなた方は、何方から来られたのですか」

まず、黒い服を着た男の方が話し掛けたが、理解出来なかった。
どうやら外国語らしい。
顔立ちからすると、恐らくは、日本人、或いは、朝鮮人。

ひとしきり話した後、脇に居た女が変わって話し始めた。
流暢な北京官話で、話しかけて来る。
「私たちは日本から来ました。ここはどこですか」
指揮官は、外国人だとわかると、拳銃をゆっくり下げ、拳銃嚢に仕舞う。
ここで、もし殺せば、場合によっては、自分の政治生命は立たれる。
そう思って、態度を軟化させた。


俄かに、周囲の兵達が騒ぎ始めた。
見た事も無い、大型の戦術機と思しき機体に、一組の男女。
そして、半ば鎖国状態の、この国に、日本人とは……

 
指揮官は、兵達を宥めてから、再び話し始めた。
「ここは、蘭州より150キロほど西方に来た場所です」
おそらく、強化服であろう異様な服を着た長い髪の女。
彼女は、脇にいる男に話し掛けていた。
男が話すと、女が通訳をし、指揮官に語り始める。
横たわっている巨人を、操縦中に、道に迷って不時着したのだという。
その話を聞いて、おそらく新型の戦術機は、戦闘中に迷ったのであろうと、彼は判断した。

取り敢えず、その場で対応出来る様、本部に連絡を入れる。
彼らは、指揮官と1名の兵士を残し、その他は、敵の集団が消えたとされる場所の確認へ向かって行った。


ちょうど夜が明け始まる時間帯であった。

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