第六百四十話 最低な奴だからその八
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「果ては仏教で言うなら餓鬼になる」
「餓鬼か」
「それになる、生きた時からな」
「そして死ぬとか」
「生まれ変わってな」
そうしてというのだ。
「身体もだ」
「餓鬼になるか」
「そうなる」
「それなら早くなれ」
尋ねられた二年生は彼を観つつ忌々し気に言った。
「あいつはな」
「餓鬼になってか」
「そして死んだらな」
その時はというのだ。
「本物になるんだ」
「本物の餓鬼か」
「それになるんだ」
死ねばというのだ。
「そうなったら誰が布施餓鬼なんかするか」
「布施餓鬼?何だそれは」
フランツはそのことに問うた。
「一体」
「餓鬼は常に餓えているな」
タムタムが言ってきた。
「だからだ」
「餓えている鬼か」
「そうだ、元々はマウリアのピシャーチャだった」
この魔物だったというのだ。
「それが仏教に入ってだ」
「餓鬼になったか」
「餓鬼はいつも餓えている」
タムタムはフランツにこのことをあらためて話した、その腹だけが出て痩せ細ったその身体を指示しての言葉だ。
「喉は針みたいでだ」
「そういえば喉も細いな」
「手足と一緒にな」
「そうだな」
フランツは餓鬼のその外見を思い出して答えた。
「餓鬼は」
「だから食ってもだ」
喉があまりにも細くというのだ。
「喉を通らない」
「食えないか」
「若しくて手に取るとそれが食いものならな」
「どうなる」
「燃える」
そうなってしまうというのだ。
「それで食えない、水もな」
「飲めないか」
「だから渇きに苦しみ」
こちらにもというのだ。
「そして腹の中は常に爆発が起こってだ」
「苦しんでいるか」
「しかも色々な寄生虫もいてな」
仏教ではそう教えられている。
「それも蜂やムカデだ」
「毒のある寄生虫か」
「そうした虫達が刺して噛んでだ」
「痛いか」
「そして毒にもな」
「苦しめられているか」
「餓鬼は常に苦しんでいる、その餓鬼にだ」
彼等にというのだ。
「布施をして苦しみからな」
「解放するか」
「それが布施餓鬼だ、お布施をしたりそうしたお経を唱えてな」
餓鬼を苦しみから救うそれをというのだ。
「苦しみをせめて和らげる」
「それが布施餓鬼か」
「仏教にあることだ」
「そんなこと誰がするか」
二年生はまた言った、それも忌々しく。
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