第二章
[8]前話
「それだった」
「三畳もあったらな」
「わし等なんぞ一飲みだ」
「全くだな」
「だから逃げるんだ、もう二度とな」
「あそこにはだな」
「行かないぞ」
茂平にあらためてこう告げた。
「いいな」
「それがいいな、村のモンにも言っておくか」
「さもないと食われる奴が出るからな」
「そうだな、それじゃあな」
二人でこう話してだった。
それで最初に釣りをしていた場所で沢蟹を拾った、それである程度集めてから茂平は太作に対して言った。
「釣りも命あってだな」
「ああ、出来るんだ」
太作もこう返した。
「だからな」
「ああしたのがいるところにはだな」
「行かないことだ」
そうすべきだというのだ。
「最初からな」
「それが一番だな」
「ましてわし等は只の百姓だ」
こうも言うのだった。
「武芸なんぞ知らないからな」
「使えるものなんて鎌とか鍬とかだけだな」
「後は精々竹槍だ」
「お侍とは違うな」
「だからな」
「逃げるのが一番でか」
「いるとわかっていたら近寄らないことだ、わし等の仕事は百姓のsそれだ」
田畑でするものだというのだ。
「それに狩り、釣りだろ」
「戦や武芸じゃないな」
「そっちはお侍だろ」
「そうだな、今じゃ完全にそうなってるな」
「それで変なことをしても喰われるだけだ」
「蝦蟇に」
「だから近寄るな、そのうち旅の武芸者の人でも来たらその人に銭を出して退治してもらえばいい」
それでいいというのだ。
「だからな」
「わし等はだな」
「もうこれでな」
上流の方には行かない、こう話してだった。
二人は村に帰った、そして村人達に蝦蟇のことを話して以後この村では誰もそこに行くことはなかった。
蝦蟇がそれからどうなったか知らない、若しかしたら今もそこにいるかも知れない。若し河内谷に行く時があれば注意が必要かも知れない。何しろ大蝦蟇は非常に長く生きてなるもので今生きていても不思議でないのだから。
岩と思ったら 完
2021・9・12
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