第四章
[8]前話
彼等のうちの何割かは彼について悪く言うことも嫌うこともしなくなった、だが葛飾はボランティアの施設で猫達を見ながら碧に言った。
「この子達もな」
「里親探してくれますか」
「ああ、そしてまだ二匹位は犬の面倒を見れる」
「それで、ですか」
「また連絡してくれ、どの子も命なんだ」
それ故にというのだ。
「これからもな」
「大事にしてくれますか」
「大事にしているんじゃない」
葛飾はこのことは否定した。
「あんただって捨てられたり道具に思われたら嫌だろ」
「はい、本当に」
碧も答えた。
「そしてこうした子達が可哀想ですから」
「動いてるな、人はそう思わないとな」
それこそというのだ。
「駄目だと思うからな」
「大事にしているんじゃなくて」
「当然なんだ」
自分がしていることはというのだ。
「そうなんだ」
「そうですか」
「だからな」
葛飾はさらに言った。
「わしのやることは大事なんて思わないでくれ」
「当然ですか」
「そうだ、人も他の生きものも同じ命なんだ」
まさにというのだ。
「だからやっていくんだ」
「これからもですね」
「そうだ、本当に考えてみるんだ」
葛飾は怒った声で言った。
「自分がそういった目に遭ってみろ」
「ペットと同じ目にですね」
「そうすればわかるんだ」
それでというのだ。
「全く、そんなこともわからないでな」
「人としてどうか」
「そうだ、人間ならそれ位考えろ」
強く言い続けるのだった。
「だからわしはこれからもやっていくぞ」
「辛い境遇の生きものを助けることをですね」
「そうだ、これからもな」
こう言ってだった。
葛飾は自ら進んで生きもの、辛い境遇にある彼等を助けていった。すると彼の認識をあらためる者が増えたが彼は口煩い老人のままだった、そしてそうした意見は気にせずかついい評価にも奢ることなく言い続け活動を続けた。口煩く偉そうだがそれでも命を大事にする老人として。
偉そうな老人 完
2021・6・13
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