第一章
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マンドラゴラ
マンドラゴラは根が人の形をした霊草だ、薬の調合に使うとまさに万能の効用を見せる。その為薬剤師だけでなく医師や魔術師、錬金術師達にも使われる。
しかし引き抜く時恐ろしい叫び声を挙げその声を聞いた者はショック死してしまう、その為手に入れることは非常に難しかった。
数自体は多いが命と引き換えだ、それで誰もが高値で取引をしていた。
「この世界でもですね」
「はい」
その勢力で宰相を務めている太宰修治に官吏の一人、狼人の彼が述べた。
「犬に引かせてです」
「そうして抜かせますね」
「そうすればです」
「犬はマンドラゴラの声で死にますが」
「マンドラゴラは手に入ります」
「そうなりますね」
「左様です」
こう太宰に話した。
「そうなっています」
「私達の起きた世界でもです」
太宰は落ち着いた声で述べた、実に冷静で知的な顔立ちである。姿勢も整いまさに一国の宰相という雰囲気である。
「マンドラゴラはその様にしてです」
「手に入れていますか」
「そう言われています」
「そうですね」
「ですが」
ここでだ、太宰は述べた。
「それを行いますと」
「犬は死にます」
「そうなりますね」
「復活の術で蘇らせられます」
官吏はそれは可能だと述べた。
「そうすれば」
「左様ですね、ですが」
「復活させる術は」
「レベルが高いです」
「使える人は少ないです」
「僧侶のレベル五の術が一番早いですが」
それでもというのだ。
「そのレベル五の術を使うにも」
「相当な強さになっていることが必要ですね」
「はい、ですから」
「マンドラゴラはですね」
「高価なものです、また犬の命を奪うことについても」
「どうかという意見がありますね」
「そうした状況です」
こう太宰に話した。
「例え復活させられても」
「やはり死ぬことは死にます」
「犬を犠牲にしていいのかと」
「左様ですね」
「それやね」
棟梁の座にいる紫綾乃も言ってきた、光の精霊だけあり眩く姫巫女の服に少女の顔と短く切り揃えた黒髪が実によく似合っている。
「やっぱり」
「はい、犬に罪はありません」
官吏は綾乃にも述べた。
「食するのではなくです」
「マンドラゴラを手に入れる為だけに命を粗末してええか」
「犬の命を」
「ワンちゃんに罪はないで」
綾乃もこのことを指摘した。
「そやから」
「復活させられるにしても」
「そんなな」
「無下に死なせることは」
「やっぱりよおないわ」
「左様ですね」
「何とかしないな」
綾乃は考える顔になって述べた、棟梁の座に正座をしたまま腕を組んだ。
「そこは」
「そうですね、まことに」
「太宰君もそう思うやろ」
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