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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
疾走編
第三十九話 エルゴン星域会戦(前)
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敵は艦隊を二分した様だ。第三艦隊には敵艦隊の内二万隻が向かいつつある。となると我が艦隊のとる道は…。
「閣下、敵が二つに分かれました。二万隻の集団と一万一千隻の集団です。通信傍受の結果、二万隻の艦隊はヒルデスハイム艦隊、もう片方の艦隊はメルカッツ艦隊と呼称されている事が判明致しました」
「了解した。それで参謀長、何か意見はあるかね」
「はい、現在動いているのはヒルデスハイム艦隊のみです。この艦隊が第三艦隊に向かうのを阻止せねば、兵力で劣る第三艦隊は敗れてしまいます。転進しヒルデスハイム艦隊の側面を衝きましょう」
「確かにメルカッツ艦隊は動きを見せておらんが、それは我が方の動きを見極める為だろう。第三艦隊に連絡して挟撃体制を取るのではなく後退しつつ一刻も早く合流するのだ。急げ」
なるほど、分進合撃を止める訳か。うまくいけば合流した正面でヒルデスハイム艦隊と対峙する事が出来るなあ。そうすれば優位に立つ事が出来る。だが、あの動かない艦隊は何を考えているのだろう。いや、まったく動かない訳ではない。後退を始めた我が艦隊との相対距離を等しく保ったままこちらに着いてくる。着いてくるだけで何もしようとしないのが不気味だ。こちらが合流に成功すれば、敵は前衛にヒルデスハイム艦隊、後衛にメルカッツ艦隊、という形になる。いつでも飛び出せるぞ、という事になるのか。五千隻の兵力差があるだけでこんな厄介な事になるとは…。




8月30日19:00 エルゴン星域、銀河帝国軍、ヒルデスハイム艦隊、旗艦ノイエンドルフ
ヒルデスハイム

「反乱軍艦隊、通信傍受により第三艦隊と判明。距離三百光秒」
にわかに二万隻の艦隊司令官になってしまったが、果たしてうまくいくだろうか…何を弱気な事を言っているのだヒルデスハイムよ!!
一度の失敗は一度の成功で取り戻せばよいのだ…しかし大艦隊の司令官というものは大変だな。私の艦隊だけではなく、フレーゲルやシャイドの面倒まで見ねばならん…言ってる傍からこれではな…まったく、何の用なのだ…。

“伯、いや艦隊司令官閣下とお呼びすればよろしいかな、ヒルデスハイム中将”

「何の用かな、フレーゲル少将」

“これは異な事を…まもなく叛徒どもの第三艦隊とやらを、こちらの有効射程圏内に捉える事が出来ますぞ。私とシャイド男爵とで突撃を敢行しようと思いますが、よろしいかな?”

いきなり突撃だと?馬鹿な、何を考えているのだ……そうか、ついこの間まで私も彼等と同じ様な事を言っていたな。ファーレンハイト中佐の言いたかった事が今更ながら身に染みる…。我々の様な者を補佐せねばならんとは、軍人達も骨が折れる事だな…。
「少将、よく敵の動きを見るのだ。敵は我々と距離を保とうとしたまま九時方向に移動している。不利を悟ってもう一つの艦隊と合流す
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