第百十三話 甘寧、敵陣を見るのことその一
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第百十三話 甘寧、敵陣を見るのこと
遂にだ。劉備達は赤壁に着いた。そこに来るとだ。
まずは北岸を見回してからだ。そのうえでだ。
北岸に布陣をはじめた。そうして。
船もだ。長江中から呼び寄せ。
川も固める。その中でだ。
孫権がその川を埋め尽くす船達を見て言った。
「まずは見事と言うべきか」
「はい、兵も人もです」
「全て揃いました」
孫権の後ろからニ張が答える。
「後は敵を迎え撃つ」
「それだけです」
「ええ、そうね」
孫権は二人の話を聞いて頷く。しかしだ。
川を埋める船達を見てだ。こうも言うのだった。
「船は木だから」
「火ですか」
「それが気になるというのですね」
「空気が乾いていて風も強いわね」
言ったその瞬間にだ。風がたなびき。
孫権のその紫の髪が揺らぐ。その中でだ。
憂いの顔でだ。孫権は二張にまた言う。
「風によっては火刑で大変なことになるわね」
「ですからこうして風上に布陣しているのです」
「火刑を避ける為に」
「そうね。じゃあ杞憂かしら」
孫権は自分のそうした心配性なところにも言及した。
「私の」
「確かに敵は怪しい者達です」
「何をしてくるかわかりません」
それはこれまでのことでわかっていた。しかしだった。
「ですが今は備えもしています」
「結界も張っていますし」
仮に妖術で来られてもだというのだ。
「そうそう簡単には敗れはしません」
「後は敵の内情を調べてです」
「数と装備ね」
孫権は具体的に述べた。
「それに何処にいるのか。布陣も」
「それについてはすぐにです」
「物見を出しましょう」
「ええ、じゃあここは」
こうしてだった。まずは偵察を出すことになった。その人間はというと。
ジェニーだった。彼女が手下達と共に出る。その中でだ。
一緒に出ているロックがだ。ジェニーに尋ねた。
「長江のことは知っているのか?」
「長江も何度か入ったことがあるわ」
そうだとだ。ジェニーは船の甲板からその海の如き河を見つつ答えた。
「知らない訳じゃないわ。けれど」
「けれど?どうしたんだ?」
「この時代の長江は孫策さんのところでお世話になった時に少し回っただけよ」
それだけだというのだ。
「正直あまり知らないわ」
「そうだったのか」
「ええ、実はね」
「長江でも時代によって違うんだな」
「海も川も全部そうよ」
ジェニーは船の上でロックに話す。
「時代によって違うのよ。いえ」
「いえ?」
「一年、一ヶ月でも変わってくるものなのよ」
「生き物みたいだな。そりゃ」
「そうよ。海も川も生きてるのよ」
ジェニーは真顔でロックに話す。
「
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