回想編 時代の始まりを生きた者達
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話」をこの地に残したのだった――。
◇
――遥か昔。世界各地を渡り歩く、1人の冒険家がいた。
天に十字星が輝いていた夜。
とある辺境の地を訪れていた彼は、そこで盗賊の群れに囲まれてしまったのだが。偶然にも戦を終えて帰る途中だった騎士団と遭遇し、盗賊を撃退して貰ったのである。
彼らは激しい戦いに傷付き、疲れ果てていたのだが。それでも冒険家の青年を見捨てようとはせず、傷付いた身体で盗賊達とも戦ったのだ。
そんな彼らに感銘を受けた冒険家は騎士団の従者に志願し、その騎士団が仕えている貴族が独立を果たすまで、様々な雑務に従事した。星空に十字星が現れた時、騎士団はどれほど不利な戦にも必ず勝利していた。
その幸運を何度も目の当たりにしてきた冒険家は、十字星はこの騎士団に勝機を運ぶ星なのだと確信したのである。やがて騎士団は数多の武勲を立て、辺境の地に「公国」を築き上げたのだった。
一国の誕生に携わった、始まりの騎士。
その勇姿を己の目に焼き付けた冒険家は、自分に手伝えることはもうないのだと悟り、独立して間もない公国を後にした。
それから、気が遠くなるような長い年月が過ぎた頃には。
老いさらばえたかつての冒険家は、ハンターズギルドのマスターとなっていた。
彼はある日、「公国」となって久しい思い出の地に足を運んでいたのだが。その道中で、死に瀕している1人の少年を発見したのである。
凶暴にして強大なモンスターが跋扈するこの時代において、幼い子供が犠牲になることなどさして珍しい話ではない。
しかしその少年は並外れた生命力により、辛うじて己の命を繋ぎ止めていた。
だが、少年を見つけた老人が驚いた点は、そこではなかった。少年は譫言ながら、他の者達の身を案じるような言葉を呟いていたのである。
自分が今まさに死に瀕しているというのに。意識すら混濁しているというのに。その少年は己の命より、他者の安全を慮っていたのだ。
老人はその時の少年の姿に、若き日に見た「始まりの騎士」を重ねたのである。
盗賊に囲まれ、殺されかけたあの夜。
傷付いた身を引き摺りながらも自分を助けに来た騎士団長――アレクセイ・ルークルセイダーも、己の命より冒険家の安否を優先していた。
あんな伝説級のお人好しが、この時代にも居るというのか。
その光景に瞠目した老人は、少年が快復して意識を取り戻し、名を明かす前から確信していたのである。
この少年は紛れもなく、あの騎士の子孫なのだということを。
十字星の加護を受け、数多の死線を潜り抜けていた、あのルークルセイダーの騎士なのだということを。
そうと分かれば、救わずにはいられなかったのだ。
例え
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