火山編 十字星を背負いし男達
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の道半ばで……クリスティアーネの前で、これしきの相手に屈している暇などないッ!)
そんな彼らに続くように。ひび割れたリオソウルUシリーズで身を固めているディノも、ドラゴンキラーの刃を杖に立ち上がり、覇竜の巨体を睨み上げている。
(……オレだって、まだッ……!)
そして。
半壊したレウスSシリーズから剥がれ落ちる装甲を気にも留めず、その身を引き摺るように歩み出したアダイトも、ヒーローブレイドCを握る手に最後の力を込めていた。
例え、この先に待ち受ける結末が逃れられない「死」であろうとも。ポッケ村のためにも、ゼークト家のためにも、引き下がることは出来ない。
そうでなくとも、眼前の人間達を「宿敵」と認めた覇竜が、この期に及んで彼らを見逃すはずもない。
やるか、やられるか。双方が選べる道はもはや、その二択のみなのである。
(あれ、は……)
その時。周囲の火山から噴き上がる黒煙に阻まれていた星空が、僅かにその美しさを覗かせていた。
夜空を染め上げんと立ち登る暗黒の隙間から、微かに窺える星々の輝き。そこには確かに、剣の如き「十字」が描かれていた。
星の彩りによって完成する、夜空の十字星。その煌めきに気付き、満身創痍のまま天を仰ぐアダイトの眼には、一振りの剣を彷彿とさせる星々の光が映し出されている。
「十字星……!」
やがて、血を滲ませている口元から呟かれたのは。かつての師から教わった、遥か昔に途絶えたとされるルークルセイダー家に纏わりし古の伝承であった。
◇
「……」
遡ること、約9年前。当時10歳の少年であったアダルバート・ルークルセイダーは独り、薄暗い森の奥へと身を寄せていた。
ユベルブ公国と他国との国境付近にあるこの森は、彼の小国の城下町を一望できるほどの高さにある。
闇夜の森へと足を踏み入れる直前、その「故郷」の方へと振り返った少年の背に、しゃがれた老人の声が掛けられた。
「帰って来おったか」
「……」
その声の主である小柄の老人は、深い森の闇からゆっくりと身を乗り出すと。竜人族の証とも言える長い耳を揺らし、静かな足取りで少年の隣に歩み寄っていく。
自身の側に立つ、「命の恩人」である老人の横顔を一瞥した少年の表情は――「帰郷」を果たしたばかりとは思えないほどに、暗く澱んでいた。
「皆……元気そうだったよ。父上も、大公殿下も、デンホルムも……クサンテも。皆、元気に頑張ってる。前を向こうとしてる」
「そうか。そりゃあ、何よりじゃのう」
「……」
姫君達と共に馬車に乗っていたところを上位のドスファンゴに襲われ、崖下へと転落したあの日から。少年は半年間も眠り続け、死の
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