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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(10)〜セレンゲティ氷原大機動戦(下)〜
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―ラインハルトにとり信頼できる練度の部隊が著しく欠如していたことからも判断の正誤を問うのは困難であろう。それだけにフランダンや諸侯領軍をこれまで指揮してきた直轄領部隊、すなわち帝国正規軍と同列の有能無能の物差しのみで判断してしまったのである。

 とにもかくにも、ラインハルトらは半日かけて後衛の再掌握を行うことを余儀なくされた。
 しかしながらセレゲンティ方面隊も消耗著しく、ヴァンフリート師団は陣地を放棄し、隘路の要所を破壊しながら4=2基地へと後退を余儀なくされた……ターイー戦闘団を除いては。



 ようやく自部隊に戻ってきたニュースロットは人心地つく間も無くターイーの招待を受け、ムサンダムの軍用馬運車を見学している。

「驚きました」
 出された珈琲を片手にスイートロールを齧りながらニュースロットはゆっくりと駱駝達を眺めている。
「あん?」
 ここにいるのは運転手とターイーとニュースロットのみである。
「温暖な土地ならともかくこの雪と氷の星に駱駝を連れて来て、
しかも容赦なく難所を乗り越えて見せる――そもそもマトモな動物であれば装甲服を着ないと活動が難しい星の筈ですが」

「それ用だからな、コイツは」
 地球時代には存在しないサイズの長毛駱駝は装置を取り外した今も至って平気そうにタロット・オーガナイゼーション畜産部門謹製の専用駱駝用レーションをモショモショと食らっている。駱駝用レーションってなんだろう、とは考えない事にした。
「良いもの食べている」
 軽く額を撫でると“なんだアンタ”というかのようにジロリ、と睨みつけ、シナモンロールの匂いを嗅ぐ。
 ニュースロットのスイートロールもタロットが『再建』したティアマト・ブランドのものだ。
 味は非常に良いしなにより無料である、タダより高いものはないというが”タダという事実”に対し対価を支払うのは我が義父と”フライングボール・ママ”の二大政党の皆様の背広組の労働であり我々軍人は無関係である、やったぜ。統帥権は首相が持ってる?知らん。

「我がムサンダムの起源は元々、銀河連邦の鄙びた自警団だからな。入植したムサンダムという星自体、テラフォーミングも不完全。こちらが適応するしかないのだよ」
 だから山岳騎兵なんてものが現役なのだよ、と笑い、ターイーがよせよせ、と首を撫でると駱駝は鼻を鳴らして飼い葉桶に再び顔を突っ込んだ。
 
「さて、本題だ」
 ターイーの目に鋭い眼光が宿った。
「ようやくですか」
 ニュースロットは不敵な笑みを浮かべる。
「この星域全域は恒星ヴァンフリートの影響を受けている、特に恒星嵐が起きたらガス惑星が連鎖的に反応しあらゆる航路が情報を遮断される‥‥‥これは無論知っていよう」

「その嵐が降り注ぐ前の兆候をヴァンフリート人は
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