第五章
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八条はパーティーがたけなわとなったところでだった。
歌った、すると家の者達は拍手を送った。その歌があまりにも見事だったので。
そのパーティーの翌日からまた仕事だった、八条は自身の執務室で仕事をしていたがもう部屋はクリスマスではなく正月それも日本のそれの趣だった。
その部屋の中でスタッフの一人が彼に尋ねた。
「長官は歌がお上手ですが」
「そうでしょうか」
「評判になっています、ですが」
「何故歌わないか」
「公の場では。国歌斉唱の時に」
ここでは連合の国歌だけではない、各国政府の式典に出た時は各国のそれぞれの国歌を歌う時もあるのだ。
「お上手だとです」
「そうですか」
「評判ですが」
それでもというのだ。
「人前では歌われないですね」
「プライベートでは歌います」
昨日のことも踏まえてだ、八条は正直に答えた。
「そちらでは」
「そうなのですか」
「では公の場では」
「そうした時以外はですか」
「歌いません」
そうしているというのだ。
「決して」
「お上手でもですか」
「私は歌手ではないので」
専門のこの職業ではないというのだ。
「ですから」
「それで、ですか」
「そこはです」
「独唱は、ですか」
「歌手の方をお招きして」
そうしてというのだ。
「お任せしています」
「そのお仕事の方にですか」
「若し私がそうすれば」
公の場で独唱等をしてはというのだ。
「その方のお仕事を奪ってしまうので」
「だからなのですね」
「それはしません」
「そうですか」
「歌が上手なら」
それならというのだ。
「嬉しいですし事実私もそう言われますと」
「嬉しいですね」
「はい、ですが」
「歌手ではないので」
「公の場では」
「歌わないのですね」
「そうです、自己顕示もです」
これもというのだ。
「人は時として必要ですが」
「それでもですか」
「こうした時にはよくないと思いまして」
「それで、ですか」
「私はしません」
「そうなのですね」
「その方にお任せします」
歌手にというのだ。
「そうします、ですから」
「これからもですか」
「国歌や軍歌は共に歌わせて頂きますが」
「独唱等ではですね」
「歌いません、これからも」
「そうされますか」
「はい、では書類を持って来て下さい」
「こちらに」
スタッフは応えてすぐにだった。
その書類を持って来た、八条はその書類に一枚一枚迅速にサインをしていった。クリスマスが終わればもう仕事だった。
多忙な中のクリスマス 完
2021・11・28
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