第三十話 ゴールデンウィークが終わってその九
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「見えないものを馬鹿には見えないと言われて見えると言う前にです」
「言われる前に見えると言うと」
「それどころか絶賛するなぞ」
「論外ですか」
「あの童話では純粋で隠さない子供こそがです」
「一番賢いんですね」
「子供は愚かではないのです」
速水は咲に確かな声で述べた。
「決して、王様や大臣は愚かでも」
「今の日本の哲学者や思想家よりはですね」
「ましです、本当は見えていなかったのですから」
「心の底ではわかっていたんですね」
「ですが彼等は」
今の日本の哲学者や思想家達はというのだ、事実そうした者達が存在しているのが戦後の日本なのだ。
「違いました」
「心の底からですか」
「わかっておらず見えていないものをです」
「素晴らしいものとですね」
「見ていたのですから」
それ故にというのだ。
「もう救い様がありません」
「愚かですね」
「そう言うしかありません、ですから」
「店長さんは哲学書を読まないんですか」
「思想書も。戦後の日本のものは」
絶対にという口調だった。
「読みません」
「そうですか」
「それまでは読みますが」
「じゃあ本当に」
「下手な哲学書や思想書は読むだけ無駄です」
まさにというのだ。
「それよりもです」
「漫画やライトノベルの方がですか」
「読むべきです」
「そうなんですね」
「そして事実訳のわからない造語や文章なら」
「読むだけ無駄ですね」
「そうです、読むなら」
それならというのだ。
「そうした本を読まれた方がためになります」
「部長さんの言われる通りなんですね」
「部長さんは高校三年生ですね」
「はい、そうです」
咲はその通りだと答えた。
「あの人は」
「高校生でそこまでおわかりなら」
「それならですか」
「非常に素晴らしいです、若いのによくわかっておられます」
「そうなんですね」
「将来有望です、難解と言っても」
それでもというのだ。
「それを理解していいのではなく」
「わかりやすい文章を書く方が大事ですね」
「詐欺師はあえて難しい言葉を使うものです」
速水はこうも言った。
「そして相手を煙に巻いてです」
「騙すんですね」
「そうしたものなので」
だからだというのだ。
「ですから」
「難しい言葉はですか」
「ましてそれを長々と言うのなら」
「読まなくていいですか」
「私はそう考えます」
咲に確かな声で述べた。
「本物はです」
「わかりやすいんですね」
「そのことを覚えておいて下さい」
「本物はわかりやすいですか」
「そして真理は」
これもというのだ。
「難しいことはです」
「ないんですね」
「簡単にわかるものです」
「わかりやすい言葉で」
「仏教の悟りも」
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